可愛くねぇ奴。 (ページ39)

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「ねぇ岸？」
『んー？』

食後のコーヒーを2人で飲む。

「…あの人のこと、全部終わったらさ、うちに遊びに来ない？」

『え？』

どういうこと？とコーヒーをすする。

「引っ越す前に、今の家に遊びにおいでよってこと」

『…待ってお前……移動になったとかじゃ…』

「違うよw」

『なら何で引っ越すんだよ』

私は周りをぐるりと見渡した。
幸い、私たち以外誰もいない。

「気分転換？w」

『あー、なるほどな？』

「だから引っ越す前に遊びに来ない？私の手料理で良ければお昼くらい作るし」

『まじ！？行く！w』

「即答…」

『当ったり前だろ！』

結構まじで楽しみだわ、と、にしし、と笑う岸に私も釣られて笑う。

「…遊びにおいでって言ったらさ」

『うん』

「全部終わったんだな、って思って」

『…おう』

岸は、ぐぐぐ、と体を伸ばして飲み干した跡の紙コップをぐしゃりと握り潰して立ち上がった。

『そろそろ行くか』
「うん」

私に平を上にして手を差し出す。

「ん？」

『ゴミ、ちょーだい？』

「あ、ありがと」

『ん』

2人並んで部屋を出て、仕事場に向かう。

2人の分かれ道について、岸は私の方に向き直った。
まくれた袖から出ている腕は薄らと血管が浮き上がっていて、男らしいな、なんて思う。

『…』

「？」

『…』

「どうしたの？具合悪い？」

『いや、』

「？」

『…Aはさ』

「うん」

『中身も外見も、…俺はまじで綺麗だと思う』

「え…？」

『だから、自信持って、余裕持って、見下してやれ』

じゃあな、と言ってそそくさといなくなってしまった。
その背中を見つめた。

「ありがと」

あー、わたし。

わたしって_______

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