可愛くねぇ奴。 (ページ38)

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『よっ』

「わ、びっくりした」

あの人からの指名が近づいてきても、私の中でそれが事件だとしても、世界は変わらずに始まっていく。

少しの息抜きに自販機に飲み物を買いに行くと、いつかのように、今度は岸が私の隣に並んだ。

『何飲むの？』

「紅茶にしようかなって」

『そっか』

「岸は？」

『俺はココア』

「そっか」

ガゴン、と音がしてお目当ての紅茶を取り出す。

『あ、そうだ。』

「ん？」

『昼、空いてる？』

「うん、空いてる」

『一緒に食わね？』

「うん、食べる」

そして時間と場所を決めて、お昼を持って集まった。
そこは岩橋くんとお昼を食べた所と同じ場所だった。

お昼を持ってその場所に行くと、こちらに背を向けて座っている岸がいた。

「おまたせ」
『おう、早く食おうぜ』
「うんっ」
『まじで腹減ったぁ～』

私はチラリと周りを見渡す。
岩橋くん、いないんだ。

「あ、Aさん！」

「あ、岩橋くん」

視線を岸に戻した時、彼の後ろに、岩橋くんの姿が見えた。
私が岩橋くんの名前を口に出すと、岸は後ろを振り向いて『うっす～』と手をあげた。

なんだ。やっぱり岩橋くんもいたんだ。

「Aさん今日のお昼何ぃ～？」

「今日はコンビニのお弁当」

「美味しそうだね」

「うん、美味しいよ」

「よかったねぇ」

「岩橋くんもこれからお昼？」

「うん！」

『なぁ岩橋、俺にもお昼何って聞かねぇの』

「岸のお昼に興味ありませぇ～ん」

『興味持てよ！w』

そんな会話を終えると、岩橋くんは「午後もがんばろうね」と私に手を振って帰っていった。

そういえば彼は手にお昼を持っていなかった。

『まったくあいつは…w』
「あはは」
『ほら、食おうぜw』

あれ、岩橋くんは？
もしかして今日は本当に2人なの？

『ん？どした？』

「あ、ううん、岩橋くん来ないの珍しいなって思って」

『あぁ…、たまには？』

たまには、2人で食べるのもよくない？って、そういうことでもいい？

それなら、結構嬉しいから。

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