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土日が明けて、いつも通り会社に出勤をする。
画面を見ながら淡々とタイピングをして、時折り手を止めて、小さく息を吐く。
それからまた、淡々とタイピングを再開する。
「…」
指は淡々とキーボードの上を歩き、それに比例して資料が書き進められていく。
しかし頭の中は、淳太の言葉と、あの人に会ってしまった時の記憶が交互に響いている。
ずっと、朝からずっと。
「…ぁ、」
ダメだ、また間違えている。
数行戻って修正する、この資料だけで一体何回しただろうか。
“ すぐにはあの人はAに会えへんよ、今までのペースだとあと数ヶ月はかかると思う。
でも…これは俺の予想やけど、ペースを上げてくると思う。
…覚悟はしとき。”
何度も何度も確認して、データを保存し、次の資料へと取り掛かる。
ミスしていないことを願おう。
『A〜』
「…」
『あれ？Aさーん？』
「…」
『ん？おぉーい』
「…っ、はいっ」
肩を優しくトントン、と叩かれて私は肩を揺らした。
いつもより勢いよく振り返ると、そこには勢いよく振り返った私に驚いた様子の岸がいた。
わっ、と小さく声を漏らした。
「あ、ごめん…どうかした？私に用？」
『あ、うん。この前の会議の時の_____ 』
頼まれた資料を引き出しから引っ張り出して岸に渡す。
「はい」
『お、さんきゅー』
「いーえ」
資料をパラパラとめくって中身を確認して、じゃ、と小さく手をあげた岸を「あ、」と引き止めた。
『？』
「マドレーヌ美味しかったよ、ありがと」
『おう、よかったわ』
ニコッ、と片方の口角を上げて柔らかく笑った岸は資料を手に自分の部署へと戻って行った。
岸と別れてから数十秒して、私の携帯が小さく震えた。
手に取って通知を確認すると、 岸優太 と表示されていた。
「( え、岸？) 」
さっき渡した資料が間違っていたのかもしれない、と思い急いで文面を確認する。
『 今日休みだったら飯行かね？ 』
問題は無かったみたいだ。
私は「行こう」と返信をして、もう1度タイピングを再開した。
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作者名：ash
| 作成日時：2020年1月20日 21時
