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雨が窓に強く叩きつけられるのをただ見つめながら、テレビもつけずにその音だけを聞いていた。



「なんか甘いもん食いたくなってきたわ」
「んー、今うち甘いものないよ?」
「Aは?食いたい?」
「淳太の言葉聞いて私も食べたくなっちゃった」
「買いに行こうかな」
「雨強いよ?」
「すぐ近くのコンビニやし大丈夫やろ」



そう言うと淳太は財布を持って立ち上がった。



「Aも行くか?」
「うん、行く」



それら全てが淳太の優しさだった。
淳太は甘いものが苦手だし、雨だって好きじゃない。
でも気分が落ちている私を外に連れ出して、少しの気分転換をさせようとしてくれて、甘いもので私を癒そうとしてくれている。



「携帯だけ持って行き?」
「ありがと」



外に出ると心なしか雨足が弱まっているような気がした。



「好きなの選びや」
「ねぇ今日は2個でもいい?」
「あほ、好きなだけ選んでええよ」
「ふふ、やった」



マンション近くのコンビニでいつもより多く甘いものを買ってうちに帰る。
意外と体も足も濡れず、私たちはリビングに直行しスイーツを口に運んだ。



「おいしっ」
「よかったな」
「うん、すごい美味しい」



そして私はまだ鞄の中にいるマドレーヌの存在を思い出した。あのマドレーヌは、また今度、大切に味わって食べようと決めた。



「雨、また強まったね」
「ん、ほんまやな」



ほろ苦さが売りのフォンダンショコラを口に運びながら淳太は外を見る。



「傘は?」
「ないけどまぁ、タクシーやし平気やで」
「ほんと?」
「うん」



私は休みだがお店は今日も開いている。
今日、淳太は出勤で、身支度も含めてそろそろ家に帰らなければならない。



「A」
「んー?」
「俺これから仕事やけど常に携帯は持っとくから気にせずいつでも連絡してな」
「うん、ほんとにありがと」



食べた後のゴミもしっかり片してから荷物をまとめ、玄関に向かう淳太を追って私も玄関に向かう。



「寝る時LINEして」
「うん」
「お邪魔しました、またな」
「ありがとね」
「うん」
「気をつけていってらっしゃい」
「はーい」



雨足がまだ強い中、淳太が帰った後の玄関扉が静かに閉まった。







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作者名:ash | 作成日時:2020年1月20日 21時

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