可愛くねぇ奴。 (ページ15)

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「そう…ですか？」
『はい。なんか…、人と話すことにすごく慣れてるというか、惹きつけるのが上手いというか…』
「…」

『ホステスさんをされてるって聞いて、ほら、ホステスさんもホストさんもそうっすけど、言ったら1対1の接客のプロじゃないっすか。
雰囲気も話し方も、他の人と違うと思ったらそういうことだったんだ～…って思って。』

「…そうだったんですね」

岸さんもお酒をぐいっと飲む。

『あと、』
「あと？」

『お綺麗っすもん』

「っ、いや、そんな…」
『お客さん、すごく多そうです』
「ま、まぁ…ありがたいことに…」

『やっぱこれだけ綺麗じゃないとできないんだな～って思いましたもん』

「ぁ、ありがとうございます…」

何だろう。
綺麗だ、なんてお客様から散々言われてきたはずなのに。
どうしてこんなにも真っ直ぐ照れるのだろう。
夜の源氏名としての私ではなく、AAに向けられた言葉だからだろうか。

それとも…

『…あの…ほんとに俺しか知らないんすか？』
「はい、初めてバレました。」
『わぁ…俺やべぇこと知っちゃったんだ…』

襟足をかく岸さんに私は頭を下げた。

「私と岸さんだけの秘密にしてください。お願いします。」

『ゎ、ぇ、ちょ！頭上げてください！誰にも言わないっすから！絶対！』

「…ほんっとに秘密にしてくださいお願いしますっ」

『え、っと、どうしたら言わないって信じてもらえますかっ』

あわあわと焦る岸さんは鞄から紙とペンを取り出し、テーブルの上で急いで何かを書き出した。

『はいこれ！』
「契約書…？」
『手書きっすけど有効ですから！』

“ 岸優太はAAさんの秘密をバラした場合、1000万の罰金をAさんに支払い、坊主にする。20××年○月△日”

最後の行には岸さんの名前と鞄のポケットから取り出したハンコが押されていた。

「坊主…」
『信じてください、言いません。』

真っ直ぐな彼の目と手書きの契約書を交互に見つめる。

「岸さんは」
『はいっ』

「真っ直ぐな人ですね」

『へ…、』

「私の名前も書きます。ハンコも押します。
これで契約完了です」
『はい…！』

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