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「ぅし、行くか」
「はい」



殺風景な廊下を先輩と進み、もう何度来たか分からない部屋に入る。

小さな部屋の真ん中に無機質なデスクと、対面式で置かれている椅子。

取調室と呼ばれているこの部屋は、何度来ても緊張感に常に包まれている。



コンコン



「はい」
「容疑者、入ります」
「はい」



常に感じる緊張感が、さらにピリつく。

私は部屋の隅にあるデスクに座り、パソコンを開き、聴取内容の記録の準備にかかる。

濱田先輩が資料に書いてある事件内容を一通り読み上げる所から聴取は始まる。




「まず最初に聞く。目的は何だ。」




先輩の聴取は『言わなければならない』という恐怖に襲われる。
聴取を受けている犯人の顔色が悪くなることは日常茶飯事で、記録を取っている私も正直すごく怖い。





「___はい。よく言ってくれたな。
○月×日、容疑者自供しました。」





聴取開始から約1時間
私のタイピングも最後の一文字を打ち終えた。

容疑者は連行され、私と濱田先輩も取調べ室を出る。




「お疲れ様です」
「Aもお疲れ!またこれを報告書にせなあかんのか…いつもありがとうなぁ」
「いえ!それも仕事ですから」
「報告書の前に休憩挟めよ?」
「先輩もですよ」
「エリートが言うならそうせなあかんなw」




先輩は本当に優しい。

聴取をしていた濱田先輩の方が100倍、いや、1000倍疲れているのにも関わらず、絶対に後輩を気遣ってくれる。




「これでやっと、山が片付いたな〜」
「ほんとですね、今回はちょっと長引きましたけど解決してよかったです」




今回の犯人の自供によって事件は解決となった。

デスクに戻り、終わったことを上司に伝え、みんなで喜び合う。

お疲れ、と労い、事件なんて起きて欲しくないよな、と皆が願う。



私達は刑事である。



しかしそんな職業が無い世の中を望んでいるのも刑事である。





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作者名:ash | 作成日時:2019年3月7日 23時

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