全てを捨てて、ここに来て (ページ30)

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ぼふり、とソファーに腰を下ろし
テレビをつけることもなく
ただ夜の静けさの中で缶チューハイを開けた。

飲み慣れているはずの味なのに、数回飲んだだけの淳太の作るお酒に舌が染まっていた。

「……」

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“ 淳太と照史だけ仲良いの、ずるいです
俺もAさんと仲良くなりたいです ”

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いつの間にか『友達になって』なんて言われない歳になっていた。

仕事で出会った人達は、現場で数回会えば割と気さくに話すようになるし。
でもそれは、『友達』とは違う気もするけれど。

何だろう、何だか心がホクホクして、むず痒い

友達になりたい、仲良くなりたいという言葉が、簡単に言えてしまうその言葉が、こんなにも影響力があるなんて知ったのはいつ以来だろうか。

友達になりたい、仲良くなりたいという言葉に『あなたの事を知りたい』という意味がある事を知っている大人になったから、そう感じるのだろうか。

ましてや、あの美青年からだ。

「私も、まだちゃんと女じゃん」

高校を卒業し、警察学校という厳しい男社会の中で生きてきた

刑事になった今も厳しい男社会の中で生きている。

OLのようなキラキラした世界とはかけ離れている場所に居続けている自分に、女の要素なんて忘れかけていた。

「…」

小さく震えた携帯のロック画面には

『今日はありがとうございました、ちゃんと家着きました？』

新しい友達に追加された小瀧さんからのメッセージが映し出されている。

アプリを開いて彼からのメッセージに既読をつけ、

『こちらこそありがとうございます』

なんてありきたりな文章。

同年代の可愛い子だったら、もっと可愛い文を打てるのかな、なんて思う。

べつに小瀧さんとどうにかなりたいと思っているわけではないし、そこに可愛さが必要かどうかは定かではないけれど。

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