第38話 随分昔の夢の話 ページ39
桜備side
夢を見た。
随分前の、それこそ消防士になってすぐくらいの頃の、クリスマスの夢。
あの日の事はよく覚えている。
その日は非番で、今じゃもう珍しいホワイトクリスマスだった。
彼女とデートの約束をしていたから、少し散歩をしてから向かおうと適当な場所をぶらついていた。
しばらく歩いていると景色は住宅地へと変わって行き、その先に、気になるものを見つけた。
桜「(…また、火事か…)」
見つけたのは決していいものでは無い。
黒煙だ。
火事場に近づくのは良くないと分かってはいるものの、俺の足はその家へと向かっていた。
家の周りにはもう既に野次馬が沢山いて、バシャバシャと少しでも火の勢いを殺そうと水をかける人や、電話を手にする人が見えた。
桜「(…そういえば、ここらへんに近い消防署は無かったな…)」
見た感じ、野次馬の中に怪我人がいるようには見えない。
かなり火が燃え移っている。あれだけ大きな火事なら住人はもうとっくに外に避難したはずだ。
早く消防車がつくといいななんて、そう思っていた時
「ちょっと前に女の子が入っていったんだ！！」
そんな、叫び声が聞こえた。
同時に、体は動き出していた。
水バケツを引ったくり、頭から被って大慌てで突入する。
何も、考えていなかった。
ただ助けなければと思った。
………だから、
？「うっぐすっひっぐ…」
…玄関を開けて数メートルの場所に座り込んでいる女の子を見て、思わず、驚いて固まってしまった。
…もちろん、扉を開けてすぐの場所にいた事にも驚いた。
けれど、それ以上に…
？「ぱぱ…まま…」
目の前で、二つの真っ黒な亡骸を抱えた少女に、絶句してしまったんだ。
桜「………焔、ビト…」
ゴトンと、片方の頭であろう部分が落ちて、崩れていった。
それはもはや、焔ビトですらない、ただの灰の塊で。
俺はただ、何も言えず、立ち尽くすことしか出来なかった。
けれど、驚いたのは当然俺だけじゃない。
俺の声を聞いた女の子は、瞼を真っ赤に腫らして、目を大きくしてこちらを振り返った。
………顔は、見えない。
いや、もう覚えていないんだ。
…でも、その子の行動があまりにも衝撃的すぎて、どんな表情をしていたかという"事実を"はっきりと覚えてる。
…その子は、驚いた表情をしたあと、俺の顔を見て笑顔で言ったんだ。
？「こんばんは、お兄さん」
2つの亡骸を抱えながらそう笑った少女に、
俺は、何も言うことができなかった。
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ふたば(プロフ) - この作品とても面白くて大好きです！夢主ちゃんのスパダリっぷりに思わずキュンキュンしてしまいます笑これからも執筆頑張って下さい✨ (2021年10月25日 0時) (
レス) @page50 id: 4559ad2a7b (このIDを非表示/違反報告)
夜月 - すごく面白いです！更新頑張ってください！ (2021年9月30日 18時) (レス) @page2 id: cc011a7ffe (このIDを非表示/違反報告)
陸(プロフ) - 色々ありますよね、大丈夫ですよ！ (2021年9月20日 0時) (レス) id: 19eff5b33e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：3度の飯より推しが好き | 作成日時：2021年9月18日 20時
