青空と副長…深山霧江 ページ19
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-とある隊士side-
がらりと窓を開け、爽やかな外の空気を肺一杯に吸い込む。
新緑と青空の鮮やかなコントラストは目にも嬉しい。
外で訓練に励む隊士達のやる気に満ちた声が微かに聞こえ、溜め息を吐く。
この声を聞いていると毎朝のことながら少しの罪悪感を感じるが、これも仕事のうち、だ。
「霧江さん、霧江さん……起きて下さい」
ゆさゆさと体を揺らし、不機嫌そうに布団に潜る彼の名前を呼ぶ。
華奢な体つきに美しい女性を思わせる端正な顔立ち。
普段の好戦的な表情からは想像もつかない無邪気な寝顔を見ていると変な気を起こしそうになる。
いけない、と首を振り、改めて彼の名前を呼ぶと長い睫毛が少し動いて吐息が口から漏れた。
「何? 今オレ超眠いんだケド」
普段は間延びした話し方をする彼の、早口で不機嫌そうな声。
ある種の迫力さえあるこの声だがこれに怯えるには少し慣れ過ぎたかな、なんて。
「霧江さん、ほかの隊士達はもう素振りをしていますよ」
「あっそ、だから何?」
僅かに覗いた瞳の奥に鋭く光る攻撃的な瞳孔。
どうやら今日の霧江さんはかなり虫の居所が悪いらしい。
「……八重さんに怒られますよ」
滅多に出さない切り札を使うと彼の眉間の皺がふっと薄まる。
いつも通りに間延びした声を上げてむくりと起き上がるのは深山霧江、新撰組副長その人だ。
今日も今日とて八重さん効果は絶大で。
心の中で無邪気な笑顔を浮かべる局長に感謝して、大胆に肌蹴た彼の襦袢をせっせと直す。
「うぇー、飲み過ぎた……」
ふんわりと空気を含んだ、それでいてまっすぐな髪をぐしゃぐしゃと掻き、大きな欠伸を一つ。
局長さえも唸らせるご自慢の美貌が台無しな気もするが寝起きだから仕方ない。
「……八重ちゃんは今日どうしてるの?」
少し頬を赤らめてそっぽを向きながら尋ねる副長に毎度のことながら少しほっとする。
彼女に出会う前の彼は本当につかみどころのない人物だった。
それを知っているからこそ、今の副長は本当に丸くなったと実感する。
「先ほど景気のいい音を立てて竹刀を折られてましたよ」
それを聞いた彼は、ふっと口元を緩めて優しく笑う。
「あーあ、誰かさんに怒られたくはないし、面倒だけど稽古するかなぁー」
グッと伸びをして立ち上がった華奢な背中はどこかほんの少し、それでも確かに浮かれて見えた。
【6月2日更新】【雪抹茶】
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すとろべり-(プロフ) - 更新しました! (2018年6月4日 12時) (レス) id: c48c36fb49 (このIDを非表示/違反報告)
すとろべり-(プロフ) - 更新します! (2018年6月4日 10時) (レス) id: c48c36fb49 (このIDを非表示/違反報告)
雪抹茶(プロフ) - 更新しましたー! (2018年6月2日 19時) (レス) id: 9248342184 (このIDを非表示/違反報告)
雪抹茶(プロフ) - 更新しまーす (2018年6月2日 18時) (レス) id: 9248342184 (このIDを非表示/違反報告)
松宮カナメ - 更新しました (2018年5月21日 14時) (レス) id: eb873f1f0d (このIDを非表示/違反報告)
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