ピンクのお魚さん ページ14
｢あ、やば…｣
歩きスマホしながら階段を降りてたら踏み外した。
｢Aさん！Aさん！｣
いつも遅刻しないAさんが来ないから心配になって、2階上に住んでるから階段で行こうとしたら倒れてるのを発見した時は心臓が止まるかと思った。急いで駆け寄り声をかける。
｢んぅ〜。お兄ちゃん誰？｣
｢え？Aさん？｣
目覚めた恋人は子供になってました。
とりあえず部屋に連れて帰りソファーに座らせる。キョロキョロしながらちょこんと座っている恋人にコップに注いだ麦茶を渡す。
｢えーと、俺の事分かんないよね？｣
｢だーれ？パパのお船の人？パパは？｣
前に父親の職業を聞いていたので、とりあえず今はそれで誤魔化しておく。
｢そうだよ。パパが戻ってくるまでAさんと一緒にいてって頼まれたんだよ｣
怖がらせないように優しく髪を撫でる。もらった麦茶をちびちび飲みながらこくりと頷いた。
｢お兄ちゃんの名前は？AはAって言うんだよ！｣
｢俺はモトキだよ。ちゃんと名前言えてえらいね〜｣
｢えへへー(*´ω｀*)｣
普段のクールな恋人とは真逆の表情に少しだけ困惑する。絶対に見れない小さい頃を見れてる様でちょっと嬉しくなる。
趣味のカードゲームを見せれば、意外にもキラキラとした目で見てきて分かりやすいように説明する。
｢パパもゲーム好きでママによく怒られてるよ｣
｢そっかぁ。お兄ちゃんもたまに恋人に怒られちゃうんだ｣
久しぶりに会ったのにカードばっかり見て楽しそうだね？なんてニコニコしながら言ってきた時は怒ってる時。
｢お兄ちゃん？だいじょぶ？｣
優しく撫でてくれる手は貴女だけど貴女じゃない…素直でニコニコ笑う貴女もいいけど、いつも素っ気ないのにたまにワガママを言ってくる貴女がいい。
｢Aさん…早く、戻ってね。｣
ギュッと抱きしめれば不思議そうな顔をしながらずっと髪を撫でてくれた。
疲れたのかソファーで眠ってしまった。顔にかかる髪を避けてあげながらそっとおでこにキスをした。
｢ん……あれ？いたっ…たんこぶ出来てる｣
目覚めた貴女はいつもの貴女で。嬉しくて思わず抱きしめる。
｢モトキ少年？｣
｢階段の所で倒れてたから心配したんだよ！よかった…｣
｢心配かけて悪かったね｣
あぁ、このちょっと素っ気ないのがいい。力を込めればチョップされた。
｢君は自分の力強さを自覚しな｣
今はチョップされてもこのままでいさせて。可愛い貴女よりクールな貴女がやっぱりいいから…
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作者名：天紅 | 作成日時：2022年4月26日 11時
