#1 ページ18
「今日の稽古はここまでにします！」
気がつけばまた同じ夢を見ていた。
中睦まじそうな年頃の子たちが何やら切磋琢磨している。
『澪、そなたはあちらに行きたいのか？』
ふと、隣に三日月がいる。
彼はいつもそう。そこにいることが分かれば存在感はすごいのに人気を感じないのだ。
「行きたい？ 行けるの？」
『ああ、しかし、澪にはちと酷な環境かもしれないな』
着物の袖で口元を隠しながらそうつぶやく三日月
「この人たちは誰なの？」
『こやつらは』
そう三日月が言った瞬間またどこかに落ちていく。
「三日月！？」
『澪自身の目で確かめるが良い。そしてどこにいたいのか。己で考えるのだ』
遠くから聞こえる三日月の声。
それからどれくらいだったのだろうか。私はなんとも形容しがたい場所に1人座っていた。
頭上に映し出されたのはわたしが夢で見たあの青い洋服を着て何やらしている映像だった。
しかし夢で見たものとは大きく異なり、私やあの女の子の扱いはこの上なく酷いものだった。
「なに、これ」
段々と全てのその映像がすんなり入っていき既視感を覚える。
激しい頭痛に手放しそうになる意識を必死でつなぎ止めどうにか時が流れるのを待った。
「私、誰なの？」
最後に見たのはわたしが得体の知れない何者かに刺された映像だった。
全てが繋がった。
私の居場所は本当はもうなくて、私自身もう存在しないはずだということ。
今までの人生、私はどうにも上手くいかず場所を点々としていたこと。
どっと感情と表現されるであろうものが押し寄せその波に耐えられず私は泣き崩れた。
──
「澪」
遠くから清光の声がする
「き、よみつ」
「よかった、いきなり意識を失うんだもん。俺は薬研呼んでくるからそのまま大人しく待ってて」
「待って！」
いきなり大声を出した私に清光は肩を揺らしつつ振り向いた
「どうしたの？」
「私、全部思い出したの。」
「なんのこと？」
あからさまに笑顔を作り首を傾げた清光に私は問いかけた
「三日月が教えてくれた。ねえ清光、私はどうするのが正解なの」
そう縋り付いても清光は俯くだけで答えてはくれなかった。
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作者名：ナハト | 作成日時：2018年8月30日 16時
