よりにもよって ページ7
資料に目を通して待ち合わせていたビルの裏へ向かうと、神経質そうな男が慌てた様子で走ってきた。
年の頃は30くらいだろうか、けれど目は酷く落ち窪み、痩せている。
「き、きき、君か探偵社の護衛は。遅いじゃないか、僕が殺されていたらどうするんだ」
「すみません」
目の端で腕時計を確認すると、約束の五分前だった。もう少し早く来るべきだったかな、と反省する。
男は何かに怯えるかのようにブツブツと呟き、目線を忙しなく動かしていた。
「わ──悪くない、ワタシが悪いんじゃないぞ、大体何故狙われねばならんのだ。商売だって合法だし、何より明日になれば無実の証拠が上がる。だからそれまで、それま──」
依頼主は最後まで云えなかった。
僕が男の腕を掴んで思い切り地面に伏せたからだ。
刹那、黒い刃が僕らの頭上を通り過ぎた。
「笑止。何故狙われるか?それは己がそれ相応の事をしたからであろう」
声の主はコホ、コホと何度か咳き込んだ。
最悪だ。よりにもよって追っ手が此奴とは。
絶対に逢いたくない奴ランキングがあるならば、ぶっちぎりでナンバーワンになるであろう男。
──ポートマフィアの黒き禍狗、芥川龍之介。
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作者名:夕野きする | 作者ホームページ:http://http://commu.nosv.org/p/asubook/
作成日時:2019年2月23日 15時