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彼の言った通り、今日は晴天だった。すっかり熱が下がった俺は彼の車椅子を押して少しだけ公園に行った



「ねぇ、あれ桜の木だよね」
「本当だ。あと数ヶ月遅ければ桜が見れたのになあ」
「まあ半年前にここに引っ越したからね、仕方ない」


俺達は「春に桜が綺麗に見える」と謳ったこの物件を選んだ。まさか桜が見えるより先に地球が終わるなんて考えもしなかったのだ


「河村、花咲かじいさんになってよ」
「枯れ木に花を咲かせましょ〜…てなんで引いてんの」
「いや、本当にやると思わなくて」
「理不尽すぎません?」


そう言って彼は笑った。日本人だけでなく世界各国の大勢の人類が宇宙へと飛び去ったせいで公園はがらんとしていた


「僕、歩けるかな」
「ほんと?大丈夫?」
「うん。右足がヤバいだけだから、いけるかも」


そう言って彼はゆっくりと立ち上がった。クララが立ったときの衝撃はこんな感じだったんだろうな、なんてしょうもないことを考えながら彼の元へ行く


「河村、立てたね」
「なんだ、人を赤ちゃんみたいに」
「えー、だってそうじゃん?」


ぎゅっと彼を抱きしめる。そして控えめに彼から抱きしめ返される。ああ、何時ぶりだろうか、この感覚は


「福良さん、重たい」
「えへへ、気の所為だよ」
「じゃあそういうことにしときますか」


お揃いの青色のパーカー、ら指には揃いのリング、首元にはネックレス、だなんて何処のバカップルだと言われてもおかしくないような格好で思う存分彼にじゃれつく


「そろそろ寒くなってきたし、帰る?」
「そうしましょうか」


もう「また来よう」なんて言葉は言えなかった。ゆっくりと車椅子を押して公園をあとにした。
そこにはまだ蕾すら見せない桜がとても寂しくあるだけだった

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作者名:めろんぱん | 作成日時:2020年12月10日 2時

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