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「あ、雪だ」
数日前から空を埋めつくしていた雲は雪雲へと変わり、東京を真っ白に染めた。東京は前まで全く雪が積もらなかったのに今では雪が15センチほど積もるようになった。これも地球滅亡の予兆なのだろう
「今日はどこも行けないね」
せっかく今日は彼と買い物でも行こうと思っていたのに、と少しガッカリする
「そうだねえ、何する?」
「俺は、河村に任せるよ」
「お、じゃあAmazonプライムでも見ます?」
「いいね。俺また新海誠見たい」
「僕もそう思ってました。やっぱり似ている」
彼が選んだのは『雲の向こう、約束の場所』だった
いわゆる「平行宇宙」を題材にした話だった。作中で、主人公の親友はこう問った
ーーー『サユリを救うのか、世界を救うのかだ』
もし、俺が「彼」か「世界」を選ぶのだったら?
映画がエンドロールに差し掛かって俺は考えた。もし世界を選んだとしたら、世界を救ったヒーローは愛する人1人も救うことが出来なかった、なんて馬鹿げた話があって良いのだろうか
彼はじっと黙って画面を見つめる。端正な横顔がくっきりと浮き彫りになって美しい
ーーきっと俺は「世界」を救うヒーローにはなれない。俺は絵本のヒーローのようにみんなを救うことは出来ないし贔屓もしてしまう。だけど俺は彼を守るヒーローでありたいと思う
その晩は彼と手を繋いで眠った。彼の体温を感じるとどうしても心がぎゅっと縮まるような寂しさが押し寄せてきてそっと抱きしめる。雪は外で降っているだけなのに、部屋がやけに冷たく感じた
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2020年12月10日 2時