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「これから付いてきて欲しいとこあるんだけど」
「車椅子で移動になるけど…それで良いのか?」
「あ、うん全然それは大丈夫。河村さえ良ければ」
彼が俺の運転する車の助手席に座った。まだ付き合う前からもこうして2人でドライブに出かけていたことを思い出す
「色んなとこ行ったよね、何気なく」
「まあロケとかあったからなあ」
「QK、楽しかったよね」
「福良さんがいたからね」
「俺は河村が居たから楽しかったよ」
そうこうしているうちに目的地に到着した
「ここって…」
「そうだよ、懐かしいね」
この場所は彼が俺に告白してくれた所だ。東京湾越しに光るビル群の明かりが今日も変わらず俺たちを見守る。あの日の彼の震える声も手も全てが愛おしかった
「俺と結婚してくれませんか」
今日は俺の声が震える番だった。ポケットから彼のイニシャルの入った指輪を取り出して差し出す
「実は半年前から作ってたんだよね。河村と俺は同性だし、戸籍上の繋がりは持てない。だけど、俺は河村と家族になりたい」
彼がゆっくりと俺の差し出した指輪を手に取り、薬指にはめた
「……ピッタリだ」
「寝てる間にサイズ測らせてもらったんだ」
「なるほど。福良、しゃがんで」
俺は彼に言われるがままにその場にしゃがむ。シャラ、と軽い金属音が耳元でして俺は急いで首元を確認する
「え、河村、これって………」
「俺もずっと福良と家族になりたかった。結婚、してください」
彼が俺の首元にかけたのは指輪の通された銀色のネックレスで
「まさか同じこと考えてるなんて思わなかった。先を越されてしまった…」
「いやいや、待って、そんなことある?」
「僕が聞きたいよ!そんなの!」
2人で顔を見合わせて笑う。ふたつの指輪はきっと俺たちの愛をより一層深めてくれるに違いない
「ねえ、河村。ありがとう」
「こちらこそ」
3年前のあの日に彼からしてもらったのと同じくらい優しいキスを、今日は俺からした
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2020年12月10日 2時