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「専門家によりますと、あと30日後に地球は限界を迎えるようです」
ニュースはこの発表を受けて嘆き叫ぶ人々が映し出し、彼はそれを見て不快そうにテレビを消した
「どうせ僕達が騒いだところで、地球が無くなるっていうことには変わりはないんですよ?本当にしょうもない…」
そう呟いて肉じゃがを口にほおりこんだ。終末の日が決まってからも、彼は俺に野菜を食べることを強制し続けた。どうせあと少しなんだから健康なんて気にしなくていいよ、なんて渋る俺を他所に、彼は淡々と野菜料理を作った
「ねえ河村」
「どうしたの?」
「旅行でも行こっか」
「旅行嫌いなのに、珍しい」
「あと30日だから、どうせなら行きたかったとこ行こうよ。お金が無意味になる前に」
俺と河村は、付き合って3年目を迎えた。でも俺の旅行嫌いのせいで遠くに行くことは滅多になかった。この性格のせいで彼には沢山迷惑をかけたんだ。だから最後くらい彼の行きたかったところに行きたいと思った
うーん、と少し考えた後彼は言った
「じゃあ5日後から5日間。僕がプランを立てるので、楽しみにしててください」
ニヤッと笑う彼を見て思わず顔をほころばせる。この3年、同棲を始めて2年、毎日彼への気持ちの増加を感じながら過ごす日々は充実して、幸せだった。この幸せが続くといいなと思った矢先のニュースは、僕を混乱させた
「世界滅亡」
SF漫画のように地球外生命体に侵入された訳でも、アニメのように隕石が降ってくるわけでもなかった。ただ単純に、オゾン層が破壊されたりだとか核戦争をしすぎた、等の少しの原因が積み重なってしまっただけなのだ。塵も積もれば山となる、という諺の通りいつの間にか人間の所業はもはや取り返しのつかない事態となってしまい、気づけば「あと30日」しか地球は天体として存在することが出来なくなってしまった
人々は混乱に陥り、自死を選ぶもの、犯罪を犯すものが激増し、世間では秩序の1文字も見当たらなくなってしまった
ーーーーこれは、そんな残りの30日を生きる2人の話だ
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2020年12月10日 2時