春の訪れ〜�� ページ46
【春の訪れ】
「…はぁ」
中庭に面した縁側(えんがわ)で、鶴丸国永はため息をついた。
「鶴丸殿、辛気臭いですぞ」
その様子を見ていた一期一振は、ダラダラと過ごす彼に声を掛けた。
「あぁ一期、君か。今日もせいが出るな。君たちの真面目さには感心するぜ」
「そう思うのなら手伝って下さいよ」
「悪いがそれは断る」
鶴丸は庭に視線を戻した。
その先にあるのは一本の桜の大樹。
精霊が宿るこの古樹は、この本丸の守り神だ。
――そしてAと過ごした日々を思い出させる、大切な樹でもある…。
揺れる枝では膨らんだ蕾がまもなく花開こうとしていた。
「間もなく新しい審神者殿が到着される時刻です。鶴丸殿もそろそろ広間でご準備下され」
「わかってるさ…。加州はどうしている？」
「加州殿は…」
一期は少し困った顔をした。
「加州殿はいつも通り忙しくされています。それこそ少し過剰なくらいに…」
Aが本丸を去ってからも、加州は近侍の仕事を続け、懸命に本丸を支えていた。
それはまるで、寂しさを紛らわそうとしているようにも見えた。
「新しい主を迎えることに少なからず抵抗があるご様子です」
「加州もまだ気持ちの整理がつかんのだろうな。まぁ、俺も人のことは言えんが…」
二人は桜を見つめた。
桜の下で笑っていた、あの優しい笑顔が懐かしい。
「…あぁ、あの子に会いたいな」
鶴丸が静かに呟く。
「…そうですね」
それは二人に限らず、全ての男士たちが抱く想いだった。
その日、【黒の本丸】に新たな審神者が配属された。
現れたのは二人の男性だった。
ひとりは漆黒の髪と宝石のような青瞳を持った艶やかな美丈夫。
もう一人ははちみつ色の髪に琥珀の瞳をした端正な顔立ちの青年だった。
「やぁ初めまして。お迎えありがとう。早速で申し訳ないが、まずは皆の所へ案内してもらえるかい？」
審神者を名乗る男性は穏やかな笑顔を浮かべた。
彼の付き添いだという青年も人の良い笑顔で接してくる。
――ここは【黒の本丸】だ。
かつては政府にも危険視され、悪名も高かった。
そんな場所に足を踏み入れたと言うのに、二人からは警戒心と言うものがまるで感じられないのだ。
むしろ親しみ深く好意的な態度が全身から表れている。
出迎えを任されていた三日月宗近と一期一振は、彼らの予想外な反応に少し驚くのだった。
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コトナガ(プロフ) - 名無しくんさん» お読み頂きまして本当にありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いします！ (2020年8月9日 10時) (
レス) id: 14cecc8eec (このIDを非表示/違反報告)
名無しくん(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初の方からずっと楽しませていただきました！とても素敵な終わり方でとても面白かったです！続編も楽しみにしています！ (2020年8月8日 21時) (レス) id: 330cc05ab0 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(プロフ) - コトナガさん» 完結おめでとうございます！！ 最後の最後で夢主との再会してくれた！！鶴丸さん、かしゅう良かったね 続編も楽しみに待ってます！ (2020年8月7日 16時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
コトナガ(プロフ) - 鈴桜さん» 先日はコメントありがとうございました。おかげさまで最終話を迎えました。また続編を作ったときは読んで頂けると嬉しいです。それでは失礼いたします。 (2020年8月7日 10時) (レス) id: 14cecc8eec (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(プロフ) - まさかの夢主の師匠と兄弟子がぁ！！ 続きどんな事になるんだ！！ そして、夢主はどうしてるのか気になります (2020年7月31日 8時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コトナガ | 作成日時：2020年2月2日 1時
