行かせない〜�� ページ32
【行かせない】
本丸を去る日の朝。
Aは部屋の中を見渡した。
もともと私物はほとんどない。
あとは政府に行けば全てが終わる。
こんのすけが傍らで待機していた。
「主さま。準備は整いましたか？」
「えぇ。大丈夫です」
見慣れた庭の景色を目に焼き付け、Aはそっと窓を閉じた。
「こんのすけ。後のこと、どうか宜しくお願いしますね」
「ご心配には及びません。主さまもどうか…どうかお達者でいて下さい」
尻尾がふわふわと揺れた。
「それはそうと、刀剣男士の皆さまに最後の御挨拶はお済みですか？」
「それが…今日に限って誰にも会えないのです」
「会えない？確かに…今日はやけに静かですね…」
いつも通りの朝だが、いつもより静けさが増していた。
短刀たちの笑い声も聞こえず、小鳥のさえずりが大きく感じられるほどだ。
「私は彼らを悲しませてしまいましたからね」
「主さま…」
「……仕方ありません。参りましょう。こんのすけ、例の物は用意できていますか？」
「あぁ！そうでした！忘れておりました！」
こんのすけは傍らから一振の刀剣を取り出した。
それは政府から支給される、護身用の無銘刀だった。
「主さまのご要望通り用意しましたが、こんなものを今更何に使うのですか？」
「ふふ」
Aは刀を受けとると目を閉じた。
――今思えば懐かしい。
だけど今でも鮮明に記憶している。
この本丸へ来たばかりの頃のことだ。
着任したその日、いきなり刀剣男士たちに刀を突きつけられた。
突如持ち掛けられた『鬼遊び』で１日中追い回され、本気で命を狙われたこともあった。
時間遡行軍の襲撃。
三条刀剣男士たちによる急襲。
加州清光と大和守安定の重症事件。
本丸の命運をかけた、三日月宗近との一騎討ち。
――ここへ来てから本当に色んなことがあった。
様々な出来事を経て、今では固い信頼関係で結ばれた審神者と刀剣男士になれた。
それなのに――。
まさかこんなにも早く彼らに別れを告げるときが来るとは、正直思わなかった。
Aはこんのすけを抱き上げ肩に乗せた。
「こんのすけ、門の外に出るまでは絶対に私から離れないようにしてください」
「え？どういうことですか？」
Aは手にした無銘刀を見つめ、にこりと微笑んだ。
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コトナガ(プロフ) - 名無しくんさん» お読み頂きまして本当にありがとうございました。次回もどうぞよろしくお願いします！ (2020年8月9日 10時) (
レス) id: 14cecc8eec (このIDを非表示/違反報告)
名無しくん(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初の方からずっと楽しませていただきました！とても素敵な終わり方でとても面白かったです！続編も楽しみにしています！ (2020年8月8日 21時) (レス) id: 330cc05ab0 (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(プロフ) - コトナガさん» 完結おめでとうございます！！ 最後の最後で夢主との再会してくれた！！鶴丸さん、かしゅう良かったね 続編も楽しみに待ってます！ (2020年8月7日 16時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
コトナガ(プロフ) - 鈴桜さん» 先日はコメントありがとうございました。おかげさまで最終話を迎えました。また続編を作ったときは読んで頂けると嬉しいです。それでは失礼いたします。 (2020年8月7日 10時) (レス) id: 14cecc8eec (このIDを非表示/違反報告)
鈴桜(プロフ) - まさかの夢主の師匠と兄弟子がぁ！！ 続きどんな事になるんだ！！ そして、夢主はどうしてるのか気になります (2020年7月31日 8時) (レス) id: 02b3e189b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コトナガ | 作成日時：2020年2月2日 1時
