Toothbrush|43 ページ44
・
『...好き』
「__は?」
私の呼び出しに律儀に来てくれた松田、警察学校卒業式
口をついて出た言葉に『あぁそうか』とストンと落ちるものがあった
そんな彼は傑作と呼べる程間抜け面を晒す
「...罰ゲーム?」
『違う』
「...変なモン食ったとか」
『それも違う』
「...気の迷い?」
『__煩い』
彼を好きなったのも、卒業を機に告白したのも、全部私からだった__
『...振り回して、ごめんね』
人気の無い公園の寂れたベンチに申し分程度で腰掛けた
木枯らしがより一層声を上げて吹き荒れる
__返事をしてほしい相手は、置き去りにしてきたのに
「A!!」
__耳に届いた音伝に顔を上げた
鉛色のどんよりした積雲にも恐れを知らない金色の糸が揺れる
『ふ、るや』
無限の空のようでいて深い海のような瞳が私を前に瞳孔を開く
...気付けば頬に一筋、涙が伝った
『も、...無理。』
堰を切ってボロボロ涙を流す私に、彼がぎこちない手付きで頭を撫でてきたせいで余計に涙が止まらなかった
**
松田side
「じゃ、付き合うか?」
『え?』
社会人と言う名の未知の領域に足を踏み入れる目前。俺と絶えず喧嘩ばかりの日々を送っていた西城Aは妙に落ち着いて紡いだ
冷静さを欠いていたのは寧ろ自分の方。手にしていた煙草をコントのように落とす
何かの間違いかと聴いても彼女は否定する
__何で、俺?
そんな事は後回しになるぐらい、目の前で、ほんのり赤面しながら、降参だと言いたげにふわりと笑った彼女に。
__好きだと思った。コイツに対して抱いていた蟠りは“恋”というやつなのだと__
「...泣いてたな、」
一人仕方無く立ち尽くし、アイツにぶたれた頬をしょうがなく擦る
ふと目にした床に取り残されるぐしゃぐしゃの煙草パッケージ
「...んっとに、馬鹿力」
乾いた笑いを小さく上げてそれを拾い上げた
恐らくこれが最後の煙草、72番
中身を一本抜き取ってライターで火を灯す
__死んだと思ったらいきなり現れて、突然の消える宣言で。しかも消える日のカウントを煙草の番数云々で回りくどい伝え方で...
される側は、残忍だよなぁ
「...まっず」
真っ直ぐに伸びる紫煙をただ呆然と見つめながら、吐息を溢した
「ごめん、A」
...返事をくれる相手は、出て行ってしまったのに
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ふぐひらめ(プロフ) - 自分の目が土偶のように腫れあがってしまいました。松田も西城ちゃんも悪くないんだよなぁ、でも報われねぇんだよなぁ…。もし余裕が出来ましたら、この二人の普通にイチャコラしてる話が読みたいです!生前の、になるのか別世界パロになるのかはお任せします。 (10月9日 11時) (レス) @page50 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 大変面白く、続きが気になってしまって一日で読破してしまいました…何処を探しても、こんなに泣いて考えさせられた小説はありません…!素晴らしい作品を、本当に有難う御座います! (9月30日 9時) (レス) @page50 id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 何度見ても涙が止まらないです。本当に、なんで死んでしまったのでしょうかね (2023年5月7日 14時) (レス) id: 86ac079c04 (このIDを非表示/違反報告)
kaki - こんばんは。何度も何度も読んでも涙が止まらないです、、涙が枯れるかと心配になるほど、出てきます。素敵なお話をありがとうございました。 (2023年5月6日 23時) (レス) id: 9254c6c927 (このIDを非表示/違反報告)
ミートボール(プロフ) - こんばんは。初めて小説を読んで声が出るくらい泣きました。とても読み応えがあって、「何度でも読みたい」と思う物語でした、、!たくさん小説がある中でこの小説に出会えて本当に良かったと思いました。素敵な作品を描いてくださって本当にありがとうございました。 (2023年3月21日 0時) (レス) @page50 id: abe3749231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年8月12日 2時