Toothbrush|40 ページ41
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『もうすっかり夜ね...』
「ああ」
店のショウウィンドウから漏れる光で照らされる街道
並木にはライトが絡められ、イルミネーションと化していた
『イルミネーション...昔は電力の無駄使いだとしか思えなかった荒んだ心でも、年を取れば綺麗だと感じるものなのね』
しみじみと浸る思いでその美しさに息を吐き出す
『ね、松田。今日誘ってくれてありがとう。凄く楽しかった』
「...んなの俺も同じだっての。こっちこそありがとな」
性格に似合わず綺麗に笑った彼
その姿は、窓も誰の目にも映らない
「お前さ、昔に比べると丸くなったよな」
『そう?自分じゃ分からないものね。
...でも松田だって警察学校の頃はもっと尖ってた』
「まぁ...そうかもな」
何だ結局はお互い同じじゃないかと軽く笑い合う
その瞬間だった
『...?』
私達の間を横切る白い光
その一つが掌に落ちては溶けた
『わ、雪...』
夜闇を見上げれば、それを合図に降り出す淡い結晶
降り積もるぐらいでは無いが、優しく溶け込んでいく様子は路を濡らす
『あ、ねぇねぇ松田!』
「ん?」
突然思い出したかの如く、彼の正面になるよう体を向けた
『__雪!米花で見られるの久しぶり』
昔交わした会話をそっくりそのまま引き出せば、松田も覚えていたのか、目を見開いている
そして彼は決まって言うのだ
「__雪ごときにはしゃぎ過ぎだろ...」
そんな事を口にしながらも、松田は優しく笑った
__のに、
『松田?』
笑う口元は徐々に食い縛われ、辛そうに眉間に皺を寄せた彼は遂に瞳を伏せた
『どうしたの__』
「A」
松田が名を呼ぶ
私が伸ばした手を自身の手で包んできた彼は僅かに震えていた
「...俺な。____もうすぐ消えるんだ」
『え...?』
店の明かりも、イルミネーションも、すれ違う人達の笑顔でさえ、
__その光が今は痛過ぎた
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ふぐひらめ(プロフ) - 自分の目が土偶のように腫れあがってしまいました。松田も西城ちゃんも悪くないんだよなぁ、でも報われねぇんだよなぁ…。もし余裕が出来ましたら、この二人の普通にイチャコラしてる話が読みたいです!生前の、になるのか別世界パロになるのかはお任せします。 (10月9日 11時) (レス) @page50 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 大変面白く、続きが気になってしまって一日で読破してしまいました…何処を探しても、こんなに泣いて考えさせられた小説はありません…!素晴らしい作品を、本当に有難う御座います! (9月30日 9時) (レス) @page50 id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 何度見ても涙が止まらないです。本当に、なんで死んでしまったのでしょうかね (2023年5月7日 14時) (レス) id: 86ac079c04 (このIDを非表示/違反報告)
kaki - こんばんは。何度も何度も読んでも涙が止まらないです、、涙が枯れるかと心配になるほど、出てきます。素敵なお話をありがとうございました。 (2023年5月6日 23時) (レス) id: 9254c6c927 (このIDを非表示/違反報告)
ミートボール(プロフ) - こんばんは。初めて小説を読んで声が出るくらい泣きました。とても読み応えがあって、「何度でも読みたい」と思う物語でした、、!たくさん小説がある中でこの小説に出会えて本当に良かったと思いました。素敵な作品を描いてくださって本当にありがとうございました。 (2023年3月21日 0時) (レス) @page50 id: abe3749231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年8月12日 2時