Toothbrush|34 ページ35
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『降谷もお墓参り?』
「あぁ。次はヒロの所に行こうかと思って」
『私はもう景光の所には行って来た』
松田の墓で会ったのも何かの引き寄せなのだろう。そう思うようにした
揺ら立つ線香
花の香りを乗せる風
__それぞれの墓石には、
...彼らの遺骨が納骨されている
『...降谷はよく松田とぶつかってたわよね』
「それならAだって同じだろう?いつも止めに入るのは伊達とヒロで、」
『そうそう。萩原は慌ただしく右往左往してるだけなのよね。それが面白くて』
二人の間をすり抜ける風が緩やかに頬を撫でて行く
恐ろしいぐらいに冷えていた
『...皆で飲みにだって行った事無い』
「ゆっくり会話を交わす事さえも出来ずじまいで、」
『...警察学校の頃にもっと思い出作っておけば良かったのかしら。__そんなの無理よね』
ああすれば良かったこうすれば良かった、
そう未練がましく口にしてしまうのは
__二度と叶う事の無い未来だからで
あの頃のストロボは、あまりに眩しすぎた
「勝手に置いていくなよな」
『ほんと__何やってんのよ』
松田がこの場を離れなければ延々と耳にタコが出来るまで言って聞かせてやりたい
それどころか、残り3人も叩き起こして赤裸々な思いをぶちまけたい
白い息だけが吐き出されるシリアスな空気を消したくて、思いきって顔を上げた
『降谷は今何処の部署...って、やっぱ教えられないか』
「...悪い」
出方を伺おうと聴いてみたがやはりその通りらしく。警察学校卒業以来教えてくれないのは健在だ
『別にいいのよ。私だって連絡手段が無いのを言い訳に降谷と景光に会いに行こうともしなかったんだもの』
だからお互い様ね、とだんだんかじかんできた手先をすり合わせて握りしめる
その握り拳を包むようにして優しく解いたのは降谷だ
「これ。...いつでも連絡してくれ」
『これは__アドレスと電話番号?』
「あぁ。プライベートの方だから、いつ掛けてくれても大丈夫__とは言いがたいが」
『降谷多忙そうだものね。期待しないで邪魔にならなそうな時だけ掛させて貰うわ。ありがとう』
手の中に収まる降谷の個人情報を握りながら、しっかり砂利の上を踏みしめた
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ふぐひらめ(プロフ) - 自分の目が土偶のように腫れあがってしまいました。松田も西城ちゃんも悪くないんだよなぁ、でも報われねぇんだよなぁ…。もし余裕が出来ましたら、この二人の普通にイチャコラしてる話が読みたいです!生前の、になるのか別世界パロになるのかはお任せします。 (10月9日 11時) (レス) @page50 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 大変面白く、続きが気になってしまって一日で読破してしまいました…何処を探しても、こんなに泣いて考えさせられた小説はありません…!素晴らしい作品を、本当に有難う御座います! (9月30日 9時) (レス) @page50 id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 何度見ても涙が止まらないです。本当に、なんで死んでしまったのでしょうかね (2023年5月7日 14時) (レス) id: 86ac079c04 (このIDを非表示/違反報告)
kaki - こんばんは。何度も何度も読んでも涙が止まらないです、、涙が枯れるかと心配になるほど、出てきます。素敵なお話をありがとうございました。 (2023年5月6日 23時) (レス) id: 9254c6c927 (このIDを非表示/違反報告)
ミートボール(プロフ) - こんばんは。初めて小説を読んで声が出るくらい泣きました。とても読み応えがあって、「何度でも読みたい」と思う物語でした、、!たくさん小説がある中でこの小説に出会えて本当に良かったと思いました。素敵な作品を描いてくださって本当にありがとうございました。 (2023年3月21日 0時) (レス) @page50 id: abe3749231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年8月12日 2時