Toothbrush|30 ページ31
・
『じゃ、行ってくる』
「おー」
靴の爪先をトントンと地面で慣らしてすっかり着替えた松田を見上げた
鞄の中にはしっかりライターが収まっている
長旅になりそうだと車のキーを握り締めて運転席に滑り込んだ
**
『すみません予約しておいた西條です』
ふわりと優しい匂いに包まれる花屋に顔を出せば直ぐに注文していた花束が手渡される
__4束分の花束を抱えながら、それぞれの個性を表すデザインのそれに目頭が熱くなった
まずは萩原からだろうかと、助手席に花束を乗せ徐行し始めた時だった
「そんな荷物持って何処行くんだ?」
シート越しに聞こえる筈の無いアイツの声
嘘だろと恐る恐るミラーを覗いた
『__きゃあああ!!?幽霊!!!』
「もっと他に言い方無いのかよ」
ムッとする松田を他所に急ブレーキをかける
誰だって車に幽霊乗ってたら驚くだろうが
『はっ、な!!?!?意味分かんない何で居るのよ!!着いて来ないでって、』
「気分が変わった。俺がついて行きたいと思ったからついて来ただけ」
彼の申し出にどんだけ自己中だよと舌打ちをかます
おのれ天パが。ちゃっかりついて来てんじゃねぇ
『アンタは絶対行けないの!!お願いだから帰って』
「じゃあ何処行くのかだけ教えろ」
いつもだったら絶対無駄に関与したり無理矢理なんて事は無かったのに
...今回ばかりはそうもいかないらしく、さしてはこちらも今回ばかりは言うつもりも無いのだ
『...言えない』
「どうしても?」
『どうしても、よ』
頼むからアンタは帰れと無言の圧で押しきろうにも彼が有無を言わせない
遂には私が折れ、車を発進させた
『__松田は萩原の所には行った事あると思うけど...景光と伊達の所にはどう足掻いても初めてよね』
ミラー越しにその視線を一瞬交えば彼が緩く口角を上げた
「あぁ。...そういう事か」
行き先が理解出来たらしい松田は今ここで降りる選択は無いのだろう
目に見えぬ溜め息をついて車を走らせた
『着いたわよ』
後部座席の松田に呼び掛け二人して車を降りる
一つ、花束を抱えて階段を登った
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ふぐひらめ(プロフ) - 自分の目が土偶のように腫れあがってしまいました。松田も西城ちゃんも悪くないんだよなぁ、でも報われねぇんだよなぁ…。もし余裕が出来ましたら、この二人の普通にイチャコラしてる話が読みたいです!生前の、になるのか別世界パロになるのかはお任せします。 (10月9日 11時) (レス) @page50 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 大変面白く、続きが気になってしまって一日で読破してしまいました…何処を探しても、こんなに泣いて考えさせられた小説はありません…!素晴らしい作品を、本当に有難う御座います! (9月30日 9時) (レス) @page50 id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 何度見ても涙が止まらないです。本当に、なんで死んでしまったのでしょうかね (2023年5月7日 14時) (レス) id: 86ac079c04 (このIDを非表示/違反報告)
kaki - こんばんは。何度も何度も読んでも涙が止まらないです、、涙が枯れるかと心配になるほど、出てきます。素敵なお話をありがとうございました。 (2023年5月6日 23時) (レス) id: 9254c6c927 (このIDを非表示/違反報告)
ミートボール(プロフ) - こんばんは。初めて小説を読んで声が出るくらい泣きました。とても読み応えがあって、「何度でも読みたい」と思う物語でした、、!たくさん小説がある中でこの小説に出会えて本当に良かったと思いました。素敵な作品を描いてくださって本当にありがとうございました。 (2023年3月21日 0時) (レス) @page50 id: abe3749231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年8月12日 2時