おい、歯ブラシ忘れてんぞ。【松田陣平】

Toothbrush｜１９ ページ20

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『アンタ、何でここに！！それにどうやって入って、』


「ここに来たのはテレビの速報を見て、あと二階の窓から梯子かけて入った。結構ガラ空きだったぜ？」


それよりも、手の方。と促され爆弾に向き合う



『鍵は何処で手に入れたの』


「あの間抜けな犯人が落としてたぞ？ラッキーだったな」


『...そう』





＿＿ただ一つ、本当に一つ。残念な事と言えば




この金庫は二重扉になっているのだ



かくして松田が開いた扉は外側


もう一つが檻状となって松田との間を区切っている



子供だけでもそちらに引き渡そうと試みるもののやはり通り抜ける事など難しく断念



二人閉じ込められた状況に違いは無いが松田の顔が見れるだけで、声が聴こえるだけで先程の不安は消え去った




「俺がこっちのコード押さえとく」


『ありがと』



檻の外から手を伸ばし松田の押さえる手の隣コードを丁寧に断ち切る



タイマーが止まる様子も無いが爆発する気配も無い


順序よく解体作業が進められているのだと一本一本切る度に重く実感した




『...なんだか私が監獄に入れられたみたいね。いつもは入れる側なのに』


「俺へのぞんざいな態度を悔い改めろって事じゃね？」



冗談混じりにそんな事を呟けば冗談めかした回答が返ってきた



調子に乗りやがって。得意気に笑うんじゃない





「...サドンデスか」


『えぇ』




残り2本




どちらを切るかは導き出した答え次第。どちらにしても判断を下すのは私だ




「あの、」



『どうかした？』



始終無言だった子供が口を開いた。やはりずっと怖かったのだろうか




「...さっきから誰とお話してるの？」



子供の想定外の言葉にフリーズしてしまうものの意味を理解して笑顔を向けた




『＿私にしか見えない、私だけのヒーローよ』





片方のコードに手をかけた時、檻の外から松田の手が私の手に重なった







「ちゃっちゃと終わらせて、家帰って飯食って＿＿歯磨いたら寝るぞ」


『＿＿うん』








指先に込めた力





最後の一本、導線回路を切った

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