セカンド

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藤ヶ谷さんも気まずくて、きっと断って欲しいんだ。だから電話してくれた。
そう、ちゃんと分かってます。


もう子どもじゃない。
一夜限りの関係を理解できないほどおめでたくもない。



「･･･すみません。明日は予定が入りまして。キャンセルさせてもらってもいいですか？」



予定なんてあるわけない。
どんな予定もキャンセルして美容院を優先にしていた。だから、キャンセル自体初めてだった。かしこまりましたと言われ代わりの日も聞かれずこれで本当に終わるんだと思うと呆気ないなとも思う。



『･･･どんなご予定ですか？』



でも聞こえてきたのは思っていた言葉とは違う言葉
予定の内容を聞く言葉



『では、他の日ならいつご予約が可能でしょうか？』



それは、会ってもいいと言われてるように聞こえてしまう。どうしよう。それだけで嬉しい。本当に。
ホントは逢いたい。逢いたくないけど、逢いたい。



『今日連絡をしないと北山さんはもう来てくれない気がして。勝手ながら電話をかけさせて頂きました』


「･･････、」



『これからも北山さんの髪は僕に切らせてください』



あぁ、もう。
ずるい。好き。好き。好き。逢いたい。
そんな言い方･･･
断ることなんて、できない


もう個人的に触れてくれなくても
なかったことにされても、
店長と客でも。
客として髪を触られるだけでも


それでも俺は藤ヶ谷さんが好き


逢いたい。虚しくても。逢いたい。



「･･･すみません、予定はありません。明日伺います」
『お待ち申し上げています』



ただの客引き。
大事な常連を失いたくない



ただ、それだけ。分かってる。


そんなめでたい奴じゃない。


それでも、嬉しかった。


ただ、それだけ。


結局、抱いた決意なんてホントに軽くて
藤ヶ谷さんがいる美容院へ行くことになった。


何も変わらない。
片想いしてた頃と


あれはただの夢ーーー･･･


そう、言い聞かせて。

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