セカンド

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「すみません、北山さん。明日も仕事ですよね？帰りましょうか」
「･･･はい、」


風呂を上がり時刻は午前0時。
ギリギリ電車はある。
腰が痛くて電車乗る気はしないからタクシーをできれば捕まえたいけど
でもホントは泊まりたい、でもそんなこと言えない


一夜限りでもいいって自分で言ったから
一夜限りの夢ーー･･･
ここを出たら一気に現実となり、藤ヶ谷さんとはもう逢えなくなる
でも、この思い出があれば
生きていける
本当に本当に幸せだったから


今もここで好きです、って言いたい。
でも何度も行為中に言った。
今ここで言ったら重い。
だって、藤ヶ谷さんは何度も"ごめん"って謝ってたから。
それが答え


藤ヶ谷さんがチェックアウトの電話をフロントへとかける。


すると自動精算の仕組みな様で出入り口の所に精算機があった。
表示される金額を藤ヶ谷さんは財布を手に取り払おうとする。
藤ヶ谷さんに払って貰うわけにはいかず、すかさず自分の鞄から財布を取り出し無理矢理万札を入れた。休憩分の時間なため、札は一枚で足りた。



「北山さん！僕が払いますよ！」
「いえ、俺がお誘いしたので。払わせてください」
「･･･でも、」
「藤ヶ谷さんには日頃お世話になっていますし、本当に払わせて下さい」
「･･･では、すみません。ありがとうございます」


･･･これでいいんだ、
今日で終わる。
後腐れ無くていい
もう美容院の予約もドタキャンして
これで。



ホテル代も自分が藤ヶ谷さんの時間を買ったと思えば割り切れる。
大切にされてしまうと期待して
傷ついてしまうから。


先輩の時もそうだったな。
ホテルの代金は基本自分が払っていた。


そう思うと横尾さんは上司ってこともあり
払ってくれるけど



「北山さん、どうやって帰られますか？」
「あー、電車で帰ります」


視線の先にはタクシーが一台。
藤ヶ谷さんは手を挙げタクシーを止めている。



「本当にいいですか？相乗りしてきます？お送りしますけど」
「いえ、大丈夫です。彼女さんお待ちですよね」


さっき藤ヶ谷さんが彼女にメッセージを返しているのを見てしまった。"今から行く"と



「あー、すみません。ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ」



タクシーの後部座席に乗り、藤ヶ谷さんはタクシーと共に去っていった。


好きな人が好きな人の元へ行くのを手を振り見送る


なんて滑稽だろう。


自分から望んだことなのに


やっぱり胸が痛くて、


鼻がツンと染みた。

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