セカンド

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・・・藤ヶ谷さ、ん？


なんで。
このドアの向こうで藤ヶ谷さんの優しい声がする。
このドアの向こうにそれは藤ヶ谷さんがいるってことで。



「ここに入ってくのが見えまして。中々出てこなかったので…心配で」



偶然にもココに入っていくのを見られてしまったようだった。それで出てこないから見に来てくれる。
ホントに藤ヶ谷さんは優しい。
それは、俺が大切なお得意さんだから



「あ、りがとうございます…すみません。飲み過ぎてしまったみたいで。大丈夫ですから、戻ってください」
「･･･僕、水持ってるんで。取り敢えず出てこれませんか？ココには誰もいませんから。鍵かけましたし」


・・・水は確かに飲みたい。
気遣いができて優しい藤ヶ谷さんに余計に辛くなる。こんな失態を見せるのも、辛い。


何とか気を保ち、涙を手で拭いクラクラする頭を抱えながらドアを開けた。


そこには、藤ヶ谷さんはペットボトルの水を持って心配そうに立っていた。



・・・あぁ、好きだ


我慢してたはずの涙が藤ヶ谷さんを目の前にすると拭ったことが意味なかったように次々と溢れ出す。堪えられない。



藤ヶ谷さんは眉を下げ心配そうにこっちを見ている。大好きな瞳が自分を捕らえる。


「危ないっ」
「･･･すみませんっ」


その瞳に吸い込まれるように頭がクラっとして
倒れそうになったのを藤ヶ谷さんの長い腕が受け止めてくれた。
藤ヶ谷さんの胸に抱きとめられる。



謝って、どかなきゃいけないのに、その腕から離れたくなくて、


感情は止まらず


動き出す。


好きです


好きです


貴方が好きです


藤ヶ谷さんのシャツをクシャッと握り顔を上げ藤ヶ谷さんを見上げる体勢になった。


藤ヶ谷さんの戸惑う瞳と欲に溺れた俺の瞳が混じり合う。


「北山さん、大丈夫ですか？」


それでも無理矢理剥がしたりせず、そのまま受け止めてくれている。


「･･･好きです、」



もう抑えられない
このまま美容院にも通いたくない
それなら、気持ちを伝えたい
どうせ逢えなくなるのなら
潔くふられたい



「え？」


聞き取れなかったのか
藤ヶ谷さんは聞こえるように耳を近づけてくれる。



「藤ヶ谷さんが好きです、」


夢を語る藤ヶ谷さん
テレビ番組を語る藤ヶ谷さん
服について教えてくれる藤ヶ谷さん
優しく笑いかけてくれる藤ヶ谷さん
指先も香りも



「･･･それは、」


戸惑ってる顔も


全部好きです、

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