セカンド

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聞きたくもない結婚話を聞いて。
使いたくない気も使って。
酔うに酔えない。
おかしいーな。結構飲んでるはずなのに。


横尾さんが彼女の話を幸せそうにするのも
後輩に北山さんは彼女いないんですか？ってからかわれるのも慣れてるはずなのに。


何かとてつもなく悲しくなる。


そんなこんなで一人だけ盛り上がったフリはするけど盛り上がれずにいると、案の定サッカー好きの校長のおかげでお開きになった。


ここから校長は数人の部下を連れて行きつけのスナックでサッカーを見るらしい。思ってた通り。
割とギリギリな時間の解散になってしまったから、自宅に帰っていたらキックオフと同時に間に合わない。


あー、悔しい。
最初から見るのが醍醐味なのに。



「あーね、ミツ」
「え？」


腕時計を見て電車の時間を頭で考えてると



「サッカー見たくない？ツレが近くで働いてるからそこで見ない？」
「あー、いいね。近いの？」
「うん。すぐ近く･･･」


この辺りはKissも近いけど…
あそこは人気だから空いてないだろうし、多分違うよな。今頃、藤ヶ谷さんはユニホーム着て盛り上がりながらキックオフを待っているのかな。


「横尾さんが良ければ…そこ行きたい」
「うん。行こう」


そう言って横尾さんは俺の腰に手を回す。
誰もいないと自然とこうしてくる。ホントにスマートだよなぁ…


＊＊＊

・・・ホントに。
近くで。歩いて数分


目の前の看板はKissと構えてあった。
･･･え？


「ミツ待って。電話するから」
「･･･ここ？」
「そうだけど。何か問題でも？」
「いや･･･」


見るからに人で溢れてるんですけど。
コレ入れなくね？
ってか、ココ･･･
多分、藤ヶ谷さんがいる。
ユニホームを着て他の人とはしゃいでる藤ヶ谷さんがいる。
逢いたい。けど、逢いたくない。


ストーカーだと気味悪がられたくない。そんなことが浮かんできて考えてると、電話が終わった横尾さんがまた俺の腰に手を添えた。



「スタンディングなら確保できたみたい」



"渋谷のKissって店のスタンディングを予約しました。まだテーブル席や着席ブロックも全て予約空いてるとのことでしたが。せっかくならスタンディングかなと"



･･･マジかよ。
スタンディングって
藤ヶ谷さんが言っていた場所・・・
と言ってもきっと広くて見つからないんだろう。


逢いたいくせに
怖くて逢えない理由を探す
拒否することはできたのに。
俺は拒否することなく、その扉を開いた。

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