セカンド

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「ねぇ、ミツ。明日なんだけどさ。朝の特別講義、坂井先生が発熱で来れないみたいなんだけど。昼間から来れる？」
「坂井先生が？大丈夫かな。変わりたいのは山々なんだけど…」
「難しい感じ？」
「ん･･･」
「珍しいね。いつもどんな予定でも即答で変更してくれるのに」
「美容院の予約とっててさ」
「･･･美容院！？なにそれ。ほかの日に予約変更してよ」
「･･････ごめん」
「は？何で？歯医者でさえ前変更してくれただろ」
「･･････ごめん」
「マジかー。俺やるかー」
「ごめん、横尾さん」



社会人として、会社員として失格だと分かってる。
シフトを変わることなんて何ら苦ではない。
普通なら･･･



「別にいいけど。そんなに明日美容院行かなきゃいけない訳？寧ろ、髪まだ切らなくてよくない？」
「･･･ごめんホント。メシ奢るからさ」



坂井先生は国語全般の先生だ。
俺は英語・国語・社会関係をこの予備校で教えている講師。教員採用試験を目指していて在学中にココの予備校で事務のアルバイトをしていた。



アルバイト中どうしてもある日の電車の遅延により30分英語の先生が来れないことになった。



それは、本当にギリギリに事務局に連絡がきて。



代わりの講師も皆出払っていて。
事務局長の横尾さんも丁度特別集中講座を行っていたため事務局にはいなかった。
事務局には俺とパートのおばちゃんのみ。
急いで横尾さんに指示を仰ぐと、「北山くんなら教えられる」とか言って。すっげー無茶ぶりをされた。大学受験はしていたし、高校生の問題は解ける自信はあったけど。教えるとなると話は別だ。
だけど、偶然教育実習で行うために予習をしていた範囲だった。
その無茶振りにまぁ、30分ぐらいなら･･･と割り切り、何とか講義を繋いだ。


それが、びっくりするほど好評だったらしく、横尾さんの耳に入り校長自らにスカウトされた。
教員の夢は捨てられなかったけど・･
その破格な年収を提示された時、頷いてしまっていた。まぁ、ここで食べれなくなれば私立の教員になればいいか…など、簡単に考えていたのも若さからあった。
無事、英語の教員免許は取得して。


この予備校に勤めてはや8年になる。



生徒は皆一生懸命で、夢の手伝いができていると思うとやりがいも感じ仕事は楽しかった。



だから、急な講師交代も全て受け入れてきた。
予定が入っていても、キャンセルをして。

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