夕立;26 ページ38
――――生きていることを後悔なんてしほしくない。
エースが初めにそう言い出した。
『…俺は、こんな生まれだからよく分かる。生きてていいんだって誰かに言われるのって、すごく特別で当たり前なんだよ』
「A、俺たち3人からプレゼントだよい」
マルコはそう言って持っていたケースをAに渡す。
「……これ、……開けても、いい？」
「もちろんだよい。開けてみろ」
Aがゆっくりケースを開ける。中に入っていたのは、ヴァイオリンだった。
「…贈ろうか迷ったんだ。もしかしたら、いい思い出はないかもしれねぇからさ。でも、あの時、ショーウィンドウを見てるお前の目がまだヴァイオリン弾くの好きなんじゃねぇかってそう思った」
サッチが言う。
「………今、弾いていいの？」
「好きにしな。言ったろ？お前のプレゼントだ。もうお前のもんだよ」
Aがヴァイオリンの弓を構え、いくつか音を出す。
「お？なんか弾いてくれんのか？」
「………じゃぁ、前にサッチが歌ってた唄、」
前奏の何音が聴くと何を弾こうとしているのか分かった。
ヨホホホヨホホホ、ヨホホホヨホホホ
ヨホホホヨホホホ、ヨホホホヨホホホ
ビンクスの酒を届けにゆくよ
海風気まかせ波まかせ
潮の向こうで夕日も騒ぐ
空にゃ輪をかく鳥の唄
さよなら港つむぎの里よ
ドンと一丁唄お船出の唄
金波銀波も飛沫にかえて
俺達ゃゆくぞ海の限り
ビンクスの酒を届けにゆくよ
我ら海賊海割ってく
波を枕に寝ぐらは船よ
帆に旗に蹴立てるはドクロ
嵐が来たぞ千里の空に
波がおどるよドラムならせ
おくびょう風に吹かれりゃ最後
明日の朝日がないじゃなし
ヨホホホヨホホホ、ヨホホホヨホホホ
ヨホホホヨホホホ、ヨホホホヨホホホ
ビンクスの酒を届けにゆくよ
今日か明日かと宵の夢
手をふる影にもう会えないよ
何をくよくよ明日も月夜
ビンクスの酒を届けにゆくよ
ドンと一丁唄お海の唄
どうせ誰でもいつかはホネよ
果てなしあてなし笑い話
ヨホホホヨホホホ、ヨホホホヨホホホ
ヨホホホヨホホホ、ヨホホホヨホホホ
明るい夜にAの楽しそうなヴァイオリンの音が響き渡った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉うさぎ(プロフ) - なまらさん» コメントありがとうございます！夢主の能力が使われるのはもう少し先になりそうです……(´TωT｀)気長に待っていただけると作者は嬉しいです (2021年11月22日 11時) (
レス) id: 2678198c2d (このIDを非表示/違反報告)
なまら - 更新されてるか見るのが毎日の楽しみです！！夢主ちゃんの能力使われるのが楽しみです！更新頑張ってください！！ (2021年11月21日 4時) (レス) id: 26945b0253 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玉うさぎ | 作成日時：2021年10月3日 12時
