夕立;09 ページ21
『すっかり遅くなっちまったよい』
マルコがAを迎えに厨房に行けたのは結局夕方だった。
「………やめろって、…ダメだってば……」
何やら厨房からサッチの慌てた声が聞こえる。
「おい、サッチ、何やってんだよ、い………」
厨房に入り、マルコが目を見開く。
―――――そこにいたのは手首から血を流すAだった。
事の発端はマルコが来る数分ほど前にさかのぼる。
「A〜、悪ぃンだけど、ちょっ〜とだけお留守番できるか？」
「サッチ、どこか行くの？」
「この書類だけ、ハルタのところに渡しに行きてぇんだ。すぐに戻るからさ」
こくりとAがひとつ頷いたのを確認してサッチは厨房を出ていった。
そして、5分ほど経ってサッチが厨房に行くと床にぽたぽたと赤い液体。
『……おいこれ……血だよな』
普段見慣れているものゆえにこの状況で見るのはいただけない。
「…っ、おい！A！なんか怪我してっ…、包丁とか、触ってねぇよな！！」
慌ててサッチがAに近づくとAが顔を上げる。
「……あ、サッチ、あの、これは…」
Aの腕に巻かれていた包帯から血が滲む。確か腕の傷はまだ塞がっていなかったはずとサッチは思い出す。
「……お前、何して……」
『まさか……自分で………？』
Aが包帯に爪をたてる。
「おい、やめろって、爪たてんなってダメだって」
「おい、サッチ、何やってんだよ、い………」
そこにマルコが入ってきて目を見開く。
「…………A、そこにいろよい」
マルコは短くそう言って厨房を一度出ていった。しばらくして包帯と消毒液、止血剤をもって戻ってきた。
「………何でこんなことしたんだよい、A」
「……あの、ごめんなさい……」
Aの目に涙が浮かぶ。
「俺は、謝ってほしいわけじゃねぇよい。……A、なんでだい」
咎めるように言いながらマルコは元々巻いてあった包帯を外し、消毒液をかけて止血剤を塗る。
サッチがマルコの肩を小突く。
「……マルコ、そこまでだ。Aを責めんなよ。お前、言ったろ？なるべく俺達もAが嫌なことは気づくようにするって」
「……………悪ぃ。責めちまうような言い方して」
「………マルコも、サッチも僕を、かまってくれるのは、僕が、怪我して、るから、でしょ……？」
しゃくりあげるようにして言葉を紡ぐ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉うさぎ(プロフ) - なまらさん» コメントありがとうございます！夢主の能力が使われるのはもう少し先になりそうです……(´TωT｀)気長に待っていただけると作者は嬉しいです (2021年11月22日 11時) (
レス) id: 2678198c2d (このIDを非表示/違反報告)
なまら - 更新されてるか見るのが毎日の楽しみです！！夢主ちゃんの能力使われるのが楽しみです！更新頑張ってください！！ (2021年11月21日 4時) (レス) id: 26945b0253 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玉うさぎ | 作成日時：2021年10月3日 12時
