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「ヌナ、ねえ！ヌナ、
居るんでしょ？ 」
" しばらく、そっとしておいて欲しい。"
そうジョングクにメッセージを送ったきり、返ってきたメッセージにも返事はできないでいた。
ジョングクはこうやって家に来るようになったけれど、居留守を使った。
「また来るから... 」
悪いと思いながらも遠ざかっていく足音に、
ほっとしている自分がいる。
あの日のジョングクの目。
おばさんに初めて拒絶されたあの日を思い出した。
今はとても、ジョングクに会ってその目を真っ直ぐ見られる自信がなかった。
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『お先に失礼します。』
仕事が終わってバス停に着くと、また家にジョングクが来るんじゃないかと、足が重くなった。
バスには乗らず、当てもなくただ街を彷徨った。
この街ではカフェと家の往復しかしてこなかったから、辿り着くのもその範囲内で。
前に働いていたカフェの辺りまで来ると、この先になにがあるのか見当もつかない。
足が止まったところで、ふと目に入ったのはよくボラの物を買いに寄ったペットショップだった。
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「え？ リラ？」
『こんばんは。
突然ごめんなさい。これボラの... 』
ボラに必要なものを買い込んで、ユンギさんの家のインターホンを鳴らした。
「まあ、上がれよ。
ボラ、リラだぞー。」
玄関で荷物だけ渡して帰ろうかと迷っていると、
『わぁ、おっきくなったね。』
ボラが玄関まで駆けてきた。
顔つきがしっかりして、何より元気そうに育っている。
「もう、ドライフードも食べてる。
よく食うよ。」
『すごいねー、ボラ。』
ボラを撫でるユンギさんの顔が綻んで、まるで子供を褒めるお父さんみたいに自慢気で。
本当にこの人に育ててもらえて、ボラは幸せ者だと思った。
ボラの成長過程を聞きながら淹れてもらったコーヒーを飲み終えたところで、長居はいけないと腰を上げた。
『ユンギさん... 』
「ん？
なんだよ、言いにくいことか？」
『いえ、あの... また、来てもいいですか？』
戸惑いながらもそう聞くと、ユンギさんの眉間にシワが寄った。
『ごめんなさっ...
「いちいち許可なんて取んな。
いつでもボラは、俺も… お前を待ってる。」
急いで取り消そうとしたのに。
今度は目尻を下げてそんなこと言うから...
「おいっ、おまっ...
『少しだけっ、こうしててください... 』
思わず、この人の胸へ飛び込んでいた。
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作者名：sayu_ | 作成日時：2021年10月12日 3時
