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．
「ヌナ？」
『ん。』
もうこの駅に降り立つことはないんだろうと
思っていた。
幼い頃、叔母に手を引かれ降りたのが最初。
そして街を出たあの日。
ホームに発車前のベルが鳴り響いていた。
それに乗らないと決心が鈍ってしまいそうで、
ただ勢いに任せて飛び乗った。
それが最後になるんだと。
「ねえ、ヌナ。
俺ちゃんとあの人んとこ行くから。
やっぱヌナは戻ってよ。」
『ううん。大丈夫だよ。』
「でもっ... 」
『正直言うとね、着くまで確かに不安だった。
だけど、今思ったのはね、
あー、全部ここに置いて来ちゃったっんだなっ
て。
だから、ここで時間が止まっちゃってたんだな
って。そんなことだよ。』
「突然追い出されたんだもんね... 」
ジョングクが申し訳なさそうに俯く。
どう言えば、伝わるだろう。
『ありがとね、ジョングク。』
「え？」
どんな言葉にしても足りなくて、伝えきれそうにない。
『わたしが街を出た時と、今のジョングクは同じ
歳なんだよね。
ジョングクはすごいね。
ちゃんと見つけ出してくれた。
だからわたし、またここに来られたんだよ？
やっと、前を向ける。』
最後になんてしたくなかった。
空っぽのわたしを見つけて、笑いかけてくれた。
いつも手を繋いでくれた。
そんな兄弟のいるこの街。
『きっと... お母さんが
ジョングクとテヒョンに出逢わせてくれたんだ
ね。』
怖がるよりも、悲しんでいるよりも、
わたしにできることを手探りで探してみよう。
今度こそ、わたしが守りたい。
ジョングクの優しい想いも、
テヒョンのあの温かい笑顔も。
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作者名：sayu_ | 作成日時：2021年10月12日 3時
