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12話 ページ46

それからあたしたちははじめちゃんの部屋へと戻って来た。
あたしの部屋には美雪がいるので、話すならはじめちゃんの部屋だと思ったのだ。
先程勢いではじめちゃんに抱き着いてしまったせいで恥ずかしくて顔が見れず、ベッドに寝転ぶはじめちゃんを横目にあたしは窓に打ち付ける雨を窓際に立って見ていた。



一「なぁ、A」



はじめちゃんに呼ばれて振り返る。



一「どうしてみんな、月島さんの影に怯えてるんだ?」


『あんな死に方目の前で見たら誰だって…』



此方を見つめるはじめちゃんから逸らすように顔を俯かせる。
そんなあたしを見て起き上がったはじめちゃんにあたしは窓枠に両手をついて窓に背を預けながら口を開いた。
顔は俯いたままなのだが。
長い髪の毛はお風呂に入った後は乾きにくくまだ少し湿っている。
はじめちゃんはそんな髪の間から見えるあたしの顔をじっと見つめた。



『はじめちゃんは転校してきたから無理はないけど……月島冬子さんって言ったら不動高校で知らない人はいなかったよ』



彼女の面影を思い出すように顔を上げて天井を見つめる。



『いつも屈託なく笑ってて、誰にも優しく、それでいて一度舞台に立つと何かが乗り移ったような凄い芝居をするの。特にオペラ座の怪人のクリスティーヌ役はハマリ役だったわ。それが…3ヵ月前の放課後』



彼女は理科準備室で誤って頭から硫酸を被ってしまって彼女の顔は手術でも治せないほどに焼け垂れてしまった。



一「……辛いな…」



ぽつりと言われたその一言に、はじめちゃんに視線を向けて同意するように頷く。
そしてあたしは窓から離れるとはじめちゃんがいるベッドに腰掛けた。



『その後、彼女は自 殺したの。しかも、あたしたちが見てる目の前で』



あの日の事は絶対に忘れない。




夜に彼女の病室に見舞いに行ったのだがもぬけの殻で何処にも彼女の姿はなく、あたしたちは嫌な予感がして病院の外へと出たのだ。
布施君が「あそこ!」と言って指差した先には、病院の屋上に立っている月島先輩の姿。
彼女は月を背景に顔に巻かれていた包帯をゆっくりと取っていたのだ。
花束を手に持つあたしたち女子と手ぶらの布施君たち男子が屋上を見上げる。



月島「私はオペラ座の怪人。思いのほかに醜いだろう?」



ゆっくりと包帯が解かれていく。



月島「この禍々しき怪物は地獄の炎に焼かれながら」



あたしたちはじっと彼女を見つめた。



月島「それでも」

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紗菜 - こんばんは、私も金田一シリーズ初代が一番好きで見てました。初代の夢小説って他には見かけないので一気に読み上げました。続き楽しみにしてます、更新がんばって下さい。 (2019年9月22日 0時) (レス) id: 83af26d21e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さきっち | 作成日時:2019年8月6日 1時

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