ひとりじゃない証-No.2- 【金田一少年の事件簿】初代実写版 (ページ31)

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23話ページ31

九条「それじゃあ、あのボートの死体は…!?」

『…あれはここに来るはずだったもう一人の招待客、はじめちゃんが代理を務めたもう一人のS.K……橘川茂だよ!』

教室でみんなにチラシを見せながらオークション紛いの事をしていた橘川の顔が脳裏を過る。

九条「橘川茂…？」

一「橘川本人が来ていない事を知ったあんたは、内心焦っただろうな。ここでまとめて殺してしまうつもりだったんだろ」

先輩は顔を俯かせた。
あたしはそれを見ながら口を開く。

『だけど頭のいいあんたはロッジについた日、みんなが寝静まったのを見計らって橘川に電話し、彼と近くで会う約束をした。参加できなかった人には、特別なプレゼントがあるとでも言ったんでしょ』

一「その時あんたの頭の中には、ボートで助けを呼びに行くフリをして橘川を殺しにいく計画ができあがっていたんだ。そしてあんたは彼を殺し、顔を潰して湖に戻ると死体に自分の服を着せ、ボートに乗せた」

『今まで全ての死体の顔が潰されていた本当の理由はここにあったのよ。だけど、先輩の顔だけが潰されていたんじゃあまりにも不自然すぎる。そこであんたは本物のジェイソンが被害者の顔を潰していた…その事実を利用した』

一「つまり、全ての死体の顔を潰すことによってその不自然さを紛らわすためだ」

先輩より少し離れた場所に言いながら移動していたはじめちゃんはそこで先輩を振り返った。

『だけど、この巧妙な入れ替わりトリックにはひとつだけ、問題点がある』

いつき「問題点…？」

『先輩の腕時計が橘川の腕に合わなかったんだ。やむを得ずあんたは死体に時計だけはつけずにいた。そしてそれが返ってあたしたちに疑いを持たせてしまったのよ』

小林さんがスケッチブックに書いていた先輩と思われた死体の絵には、腕時計がはめられていなかったのだ。
それが犯人のキッカケとなった。
あたしたちがそこまで言うと先輩は「へへへへ!あははは!」と抑えられた両腕をそのままに背中を仰け反らせて笑いだした。
そしてあたしたちを睨みつけると、両脇にいたいつきさんと甲田さんを突き飛ばした。
ジェイソンの仮面を投げ捨てて、地面に片膝をつく。
すぐさま九条さんが斧を持って彼の背後に回り込むと、はじめちゃんが素早くあたしの腕を引っ張って後ろに隠した。
それを一瞥した先輩が此方を見上げる。

遠野「それだけじゃないさ。たとえ復讐のためでもこの時計だけは手放すわけにはいかなかったんだ」