秘書ってペットじゃないの、知ってます？【夏油傑】

11・首輪と絶叫 ページ11

.


気付けば夏油さんの秘書になって一ヶ月になろうかという日。その日も就業後、誰もいなくなったカウンターで取引先の資料を見ていた。一週間ぶっ通しでの疲れが出る金曜日。自然と重くなる瞼には抗えず、一度閉じてしまうともうだめだった。



(みんな帰ったし、少しだけなら‥‥)


‥
‥‥


薄暗いカウンターにスゥスゥと静かな寝息が響く。エレベーターから降りてきたその人はため息をついた。



『やっぱり‥最近おかしいと思った』


(無警戒にもほどがあるだろ‥)



その人はひとまずは苛立ちを抑え込んだ。内側に回り、眠るAの体を横抱きして歩き自身の執務室のソファへ降ろし、頭を撫でた



『わたしの知らない所で無理するなんて‥』




◇◇◇



体がふわりと沈む感覚。がっつりうたた寝をした頭の寝覚めは良く、目をパチパチさせそこが見慣れた部屋である事に気付く。あれ？私‥



『‥起きたかい？』



声の主は私の頭上、すぐ隣に腰かけていた


「夏油さんっ?!すみませ__



慌てて起き上がろうとついた手を払われ肩を押されれば再びソファに落ちる身体。驚く私を夏油さんは慣れた手つきで組み敷いた



「っげ、夏油さんっ!!」

『私は怒ってるんだよ。言いたいことはたくさんあるけど‥もし君を見つけたのがわたしじゃなかったらどんな目にあっていたか‥』



それは今のこの状況もそうなのでは？と思ったけど、声のトーンから怒っているのは明白で。光を映さない瞳で見据えられた身体は動かなかった。



『嘘をついて、主を欺く悪い子にはお仕置きが必要だよね』



青ざめる私の頬をひと撫でした夏油さんはゆっくりと微笑んだ



『きみはわたしが飼う事に決めたから』



________は？



「あ、あの‥すみません今なんて__



『頑張るのは応援するよ。でもわたしの知らない所でするのは認めない。本当は首輪でも付けたい気分だけど‥どう？』

「ななななに言ってるんですか？！」



首を傾げて聞くでないっ！笑顔と発言内容のギャップが大きすぎて意味がわからない。唯一わかるのは、夏油さんがオカシイという事だけ



『わかったら返事』

「は、い。いやっ、首輪は嫌です！」



ふーん、と見下ろす視線。なら仕方ないね、と聞こえた瞬間降りてくる顔に咄嗟に目を瞑り顔を背けると首筋にチリっとした痛み____‥は？


人差し指でスリ、とその所有印に触れた彼は目を細め妖しく笑った


『首輪のかわり、ね』

「何してるんですかーーーーっ!!」





.

12・軟禁ですか？→←10・期待に応えたい気持ち

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す