【イナズマイレブン】紺碧のイノセンス IV (ページ20)

今日:29 hit、昨日:44 hit、合計:323,157 hit

165話ページ20

「お疲れ様ーっ!!」

橙色に染まったグラウンドに春奈の声が響く。イプシロン改の試合からあっという間に時間が過ぎた。水城と吹雪も散歩から戻ってきている。結局サッカー関連の話は最初しかしておらず、それ以降は全て世間話だった。サッカーの話をしても気が滅入るだけだろうと思った水城の配慮である。

ちなみにグラウンドに戻ってきた2人は何故か全身ずぶ濡れですぐに瞳子に叱られた。浅瀬で靴と靴下を脱いで水の掛け合いをしていたら予想以上に白熱し、足を取られて転びそうになった吹雪が咄嗟に水城の腕を掴んで、結局2人して浅瀬に尻もちをついてしまったからだそうだ。正座をしていた水城と吹雪は、瞳子に叱られながらもこっそり顔を見合わせて笑っていた。

「ドリンクがあるわよ」

「土方君の差し入れ、沖縄特産シークヮーサードリンク!」

春奈と夏未が紙コップの乗ったトレーを持ち秋は注ぎ足す分の入ったペットボトルを持っていた。シークヮーサー、和名はヒラミレモンという。沖縄方言でシーは酸い、クワスは食わしの意味で、シークヮーサーという名称は酸食わしという意味になる(Wikipediaより)。

「「「「いっただっきまーす!!」」」」

シークヮーサードリンクの入った紙コップが全員に行き渡ると声を合わせてから口に含んだ。そして次の瞬間酸味の強さに全員が口を窄める。それは沖縄在住の綱海も例外ではない。

「土方、帰るのか」

「ああ、弟たちの飯作らないとな!」

賑やかな雷門イレブンの様子を眺めていた豪炎寺だったが、帰ろうとする土方が視界に入り声をかけた。そしてその返答に「そうか」と返す。

「…土方、いろいろとありがとう」

「礼なんかいいって!さっきも言ったろ、お前が楽しくサッカーができる!良いじゃねえかそれで!!」

そう言って土方は豪炎寺の肩に手を置き、そして雷門イレブンを見た。

「行くんだろ、円堂たちと。弟たちには上手く言っとくよ」

「…勝手ばかり言ってすまない」

「謝るこたあねえよ!俺には帰る家がある。お前には、帰るべきチームがある!それだけのことさ」

少しの間だったが居候させてもらった身。豪炎寺は土方にしてもしきれないほどの感謝の念を抱いていた。それだけのこととは言ったものの、家族が増えたら嬉しいように、家族が減ったら悲しい。頭を下げ、きちんと別れを告げた。また、会えると信じながら。