検索窓
今日:15 hit、昨日:4 hit、合計:72,711 hit

願い11 ページ13

智樹side


小さい子たちが出て行った。
僕はなんであんなことを言ったんだろう?

わざわざ怒りをかうようなことを言うなんて。

まさかあの2人なら大丈夫だとでも思ったんだろうか。


「そんな人がいるなら、兄弟はとっくに助かってる」



顔も名前も分からない兄弟のことを想う。
彼は僕のことをどう思っていたんだろうか?


その時、部屋の外で物音がした気がした。
反射的に身構える。

障子越しに見える人影は、部屋に入るのを躊躇っているようだった。


やがて決心したのか、


「兄弟、入るぞ」


と声をかけて入ってくる。


「きょ……だ、い?」



彼が?
僕の忘れてしまった兄弟なのか?



「ほんとう……に?」



震えながら聞くと、


ああ、と頷く。



懐かしいように感じるその仕草に思わず涙がこぼれる。




「兄弟!
ごめん。僕が、僕に力が無いから、
兄弟が…………」


しがみつくように抱きつき、
言いたかったこと、言えなかったことを吐き出す。

兄弟は驚いたようだったが、
優しく背中をさすってくれる。


「いいんだ。
兄弟は何も悪く無い。
悪いのは全部傷つけた奴だ。」


あやすように、お前は悪く無いと言い続ける。

それが例え嘘だとしても、
その言葉はとても嬉しくて、だからこそ僕の罪がより深いような気がして、


「ち……がう。
ぼく、が。
ぼくが、上手く出来なかったから兄弟が目をつけられたんだ。
僕の、僕のせいでッッ!」



そうだ。どれだけ許してもらっても、
それだけは事実なんだ。
僕と彼の関係は、傷つけた側と傷ついた側だ。



「それでも、俺にとって兄弟は優しくて面倒見のいい兄のような存在だ」


思わず顔を上げると目があった。



'僕'を見るその目からは逃げられる気がしなかった。


「もう、いいんだ。
ここには俺たちを傷つける人はいない。
だから、他の奴らにも会ってはくれないか?」


他の人には会いたく無いけど、兄弟が何かを頼むなんて珍しい。
断れるわけが無かった。


「……わ、かった。
兄弟がそう言うなら」



布をギュッと掴んで一緒に部屋を出る。


「怖かったらいつでも部屋を出ていいからな」


僕を守るようにして前を歩く兄弟はとても頼もしくて、結局一度も守れない自分が情けない。









僕さえいなければ、兄弟は壊れなかったのに。

願い12→←願い10



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (37 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
43人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

紗月(プロフ) - 時雨さん» いえ、わざわざありがとうございます! (2016年12月18日 1時) (レス) id: 20a4380b24 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - …って、もう解決してたみたいですね。なんか、本当にすみませんでした(汗) (2016年12月18日 1時) (レス) id: 9df64bfe3b (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 紗月さん» 黒真さんじゃなくてすみません。山伏の一人称は「拙僧」ですよ! (2016年12月18日 1時) (レス) id: 9df64bfe3b (このIDを非表示/違反報告)
紗月(プロフ) - すいません!山伏さんの一人称ってなんでしたか? (2016年10月5日 15時) (レス) id: 20a4380b24 (このIDを非表示/違反報告)
黒真 - 山伏さんが昼餉を取りに行ったんですよね?だとしたら一人称が違いますよ (2016年10月5日 15時) (レス) id: 6f04cd4e51 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:合歓木 | 作成日時:2016年8月27日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。