未来の話【花京院典明】 ページ48
「将来はどんな家に住みたい?」
長い旅路の暇つぶしに、典明はよく未来の話をした。
「家?そうね…一軒家がいいわ。書斎があればもっと素敵」
「君は本が好きだものね。僕は…そうだな、美しい絵を飾りたい」
「絵?どんな絵がいいの?」
「そうだな…花、が主題になっているものがいい。華やかな絵って、なんだか明るい気分になるだろう?」
彼の話す未来は、私にとっても素敵なものだった。庭で犬を飼って、子どもがいて、綺麗な家の中はいつも明るい笑い声であふれている。ありがちな理想だけれど、それは何よりも幸せな未来のように思えた。
「この旅が終わったら、君はどうするんだい?」
彼の問いに、私は少し口ごもった。この旅が終わっても、私に帰る場所はない。私に両親はいないし、帰るべき家もない。本当にアテがないのだ。
「…すまない、雑談のつもりだったんだが困らせるようなことを言ってしまったかな」
気遣うように私の顔を覗き込んだ彼に、私は微笑んで首を横に振った。
「何でもないの、少し考えてただけ。このまま一人で旅をしてもいいし、国へ帰ってもいいな…と思ってるわ」
「ご両親は心配してないのかい?」
「…私、両親はいないの」
はっとした顔で口をつぐむ典明に、私は軽く首を横に振った。
「気にしないで。言ってなかったんだもの」
「…すまない」
「よして、ったら。辛気臭いのは嫌よ」
話を変えたくて、私はまた未来の話を始めた。
「でも、そういう私だから、家族にはとても憧れるわ。幸せな家庭が欲しい、って思う」
だけど、と私は悪戯っぽく笑った。
「そもそも相手がいないと始まらないけど」
私の言葉に、典明はしばらく黙っていた。
(さっきのこと、気にしてるのかしら?)
名前を呼びかけようとした時、突然彼が意を決したかのような顔で口を開いた。
「その相手、僕じゃダメかい?」
驚く私に、典明はさらに続けた。
「ずっと思ってたんだ。旅が終わっても、僕は君と一緒にいたい。ただの友人としてではなく、一人の男として」
そう言った彼の真摯な眼差しに、私の心臓が早鐘を打つ。
「君と未来の話をするたびに、いつも君との未来を考えてた。二人で幸せな家庭を築いて、いつまでも幸せに暮らしたい、と」
それを聞いて、私の心臓がひと際大きく跳ねた。そっと彼は私の手を握った。彼のスタンドが薬指に巻き付いた。
「僕の未来には、君がいてほしい」
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りと(プロフ) - ∴さて、どこへ行こうか。さん» リクエストありがとうございます!返品が遅くなってしまい、大変申し訳ありません<(_ _)>リクエストの方、承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で取り扱わせて頂きたいと思います(^^♪ (2021年8月23日 23時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ?さん» ?さん、リクエストへの返信が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせていただきますヽ(*^^*)ノ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - モカさん» 返信がとても遅くなってしまい、申し訳ありません!リクエスト、承りました! (2021年7月19日 22時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
∴さて、どこへ行こうか。 - リクエストです。普段甘えない花京院典明の恋人(夢主)が甘える、という内容なのですがよろしいでしょうか?出来れば生存ifを希望します… (2020年11月6日 19時) (レス) id: a195df0bb5 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - リクエなのですが、露伴先生と病弱な夢主が恋人関係なのですがその病弱な夢主が意外にも悪徳的なスタンドを持っている事を知って何があったのかと聞くと泣きながら過去にあった親からの虐.待などを夢主が語っていき、その日は思う存分甘えされるみたいなのをください! (2020年3月27日 16時) (レス) id: d243ef7454 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2019年1月9日 21時