ボーダーライン【シーザー・A・ツェペリ】 ページ46
一線を超えて。
「ごめんね、シーザー。送らせるようなことして」
「いや、こんな夜遅くにお前一人帰らせる訳には行かないだろ。気にするな」
並んで夜のヴェネツィアの街を歩く。深い時間だから、人気はほとんどない。隣でコツコツとなるヒールの音がよく聞こえた。
(むしろもっと俺を頼れ、なんて言ったら…Aはどう思うのだろうか)
俺よりずっと小柄な彼女は、綺麗な赤のワンピースを着ていた。薄暗い中でハッと目を引く赤は、彼女によく似合っていたが、その分「良くない」奴らの目にも止まる。
そう思って、送ることを申し出たのが10分ほど前。そして今は、こうしてAと共に彼女を家へと送っている。
「シーザーは昔から面倒みいいよね。ほんといつもお世話になってます」
冗談めかした口調でそう言うAに、全くだ…と苦笑する。
Aとはいわゆる幼なじみだ。昔からトラブルに巻き込まれやすい奴で、何か起こる度に俺が助けに入っていた。その分、否、それ以上に俺はAに救われてきたのだが。
「ほんと、なんで本命作んないの?モテるし、性格も見た目もいいんだからさ」
不意にそう問われ、俺は一瞬言葉に詰まった。
本命なら目の前にいる。どうせ俺の片思いだが。
「……まあ、色々あるのさ。俺にも」
「何それ、意味深だねぇ」
謎の多い男も素敵だって思われそう、なんて笑いながら、Aは家へと続く路地を向かっていく。あと数十メートル、数メートル、そして、あっという間に玄関前。さよなら、またね…そう言ってお別れだ。
いつも通りのことである。
「ねぇ、シーザー」
「ん?」
「今日ね、ウチ…家族は出かけてるの」
不意にそう言われた。
その言葉の裏の意味が分からないほどウブじゃない。
(期待していいのか?それとも?)
ぐるぐると回る思考の中で生返事を返す。あと数メートルでAの家だ。
「…シーザー、わかるでしょ」
(分かってる、どういう意味かなんて)
俺はゆっくりと深呼吸した。そうでもしないと、本能のままに動いてAを傷つけてしまいそうだった。
「俺は、優しくできる自信が無い。それでもいいのか?」
Aは俺を見つめて、小さく頷く。
「…いい、よ。シーザーとなら」
そう言ってカチャリとドアが開かれた。
その敷居を跨いだら、もう幼なじみでは無くなる。
俺は暗い部屋の中へと足を踏み出した。
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りと(プロフ) - ∴さて、どこへ行こうか。さん» リクエストありがとうございます!返品が遅くなってしまい、大変申し訳ありません<(_ _)>リクエストの方、承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で取り扱わせて頂きたいと思います(^^♪ (2021年8月23日 23時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ?さん» ?さん、リクエストへの返信が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせていただきますヽ(*^^*)ノ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - モカさん» 返信がとても遅くなってしまい、申し訳ありません!リクエスト、承りました! (2021年7月19日 22時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
∴さて、どこへ行こうか。 - リクエストです。普段甘えない花京院典明の恋人(夢主)が甘える、という内容なのですがよろしいでしょうか?出来れば生存ifを希望します… (2020年11月6日 19時) (レス) id: a195df0bb5 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - リクエなのですが、露伴先生と病弱な夢主が恋人関係なのですがその病弱な夢主が意外にも悪徳的なスタンドを持っている事を知って何があったのかと聞くと泣きながら過去にあった親からの虐.待などを夢主が語っていき、その日は思う存分甘えされるみたいなのをください! (2020年3月27日 16時) (レス) id: d243ef7454 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2019年1月9日 21時