染まれ【プロシュート】 ページ5
一目見た時から、化けるとは思っていた。
髪の色、目の色、肌の色、体つき、顔立ち、声質…生まれ持った素質は十二分。だが、服装や身だしなみ、所作はどうにも垢抜けない女がAだった。
「おい、A」
呼び止めると、伸び放題の前髪の向こうからおどおどとした目がこちらを見る。
「いい加減、髪くらい切ったらどうだ。そこまで切羽詰まった生活でもねぇんだろう?」
俺の言葉にAはボソボソと何か言って首をふる。その姿がどうにも気に食わず、俺は立ち上がった。
「Aよォ…」
ガッチリと頬を両手で包み込むと、Aの目がはっと見開かれた。
綺麗な目だ。なのに、長いまつ毛に縁どられた美しい形の目は、落ち着かなさげに泳いでいる。それが、気に食わない。
(もっと自分に自信を持て!しゃんとしろ!)
もう一度名前を呼ぶと、Aの目が俺の目を捉えた。
「その伸ばしっぱなしのパサついた髪も、垢抜けねぇ服装も…どうにかしろ。ギャングとして恥ずかしくねぇ身だしなみくらいはしっかりとしろ。わかったな?」
そう言ってから数ヶ月後、Aは目覚ましい変化を見せた。
伸ばしっぱなしだった髪は、Aの輪郭を美しく見せる髪型に、服装も野暮ったい印象から、洗練された印象の服装に変わった。Aは間違いなく美しい女になった。
「よぉ、A」
「プロシュートさん…!」
もうボソボソとは話さない。
『どうかしら、今日の格好?私に似合うもので、気に入ってるのを選んだつもりなのだけれど…』
もう俺が近づいただけで、おどおどと目を逸らそうとするAはいない。そこには凛とした立ち姿でこちらを見る女がいる。
俺はふっと頬を緩めた。
「お前もなかなか分かってきたらしいな。上出来じゃあねぇか」
そう言うと、Aは上品な頬笑みを浮かべた。
(ますます、俺好みの女に仕上がってきた。)
ふと手先に視線をやると、肌の色に合う紫色のマニキュアが塗られている。
(俺の色だ)
グレイトフル・デッドの煙の色と同じ色が塗られている。
(Aの意思で、俺の色を選んだのか)
「そのマニキュア、良い色だな」
そう褒めると、Aは少し赤くなった。
(そうだ、そのままでいい…)
目の前に立つAに、ふっと煙草の煙を吐きかける。はっと赤くなるAに、俺は黙って口角を上げた。
そのまま俺の色に頭の先から爪先まで染まり切ってしまえばいい。
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りと(プロフ) - ∴さて、どこへ行こうか。さん» リクエストありがとうございます!返品が遅くなってしまい、大変申し訳ありません<(_ _)>リクエストの方、承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で取り扱わせて頂きたいと思います(^^♪ (2021年8月23日 23時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ?さん» ?さん、リクエストへの返信が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせていただきますヽ(*^^*)ノ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - モカさん» 返信がとても遅くなってしまい、申し訳ありません!リクエスト、承りました! (2021年7月19日 22時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
∴さて、どこへ行こうか。 - リクエストです。普段甘えない花京院典明の恋人(夢主)が甘える、という内容なのですがよろしいでしょうか?出来れば生存ifを希望します… (2020年11月6日 19時) (レス) id: a195df0bb5 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - リクエなのですが、露伴先生と病弱な夢主が恋人関係なのですがその病弱な夢主が意外にも悪徳的なスタンドを持っている事を知って何があったのかと聞くと泣きながら過去にあった親からの虐.待などを夢主が語っていき、その日は思う存分甘えされるみたいなのをください! (2020年3月27日 16時) (レス) id: d243ef7454 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2019年1月9日 21時