麻酔【グイード・ミスタ】 ページ38
(撃たれちまったなぁ)
ボタボタと落ちる血を見ながら、俺は眉をひそめた。アドレナリンのおかげで痛みはそんなにない。だが、弾が腕に残ったのはいただけない。
(なんとか、弾は出さねェと…)
俺はふらりとアジトに戻った。
「…!」
アジトにいたのはAだった。俺の姿を一瞥して眉をひそめる。
「…誰とやったの?』
「知らね。全員やっちまった」
「馬鹿」
「怪我して帰ってきたんだぜ?心配くらいはしてくれよ」
「医者、行ったら?」
可愛げがない。が、その可愛げのなさが好きだ。
「遠慮しとく。ンなことに金に使うの勿体ねぇし」
「…そ」
「あ、でもよ…弾残っちまってんだ。それだけ出してェ」
一瞬嫌そうな顔をすると、彼女は救急箱から必要な道具を出し始めた。
「麻酔、無いから痛いと思うけど」
Aはそう言うと、ピンセットに脱脂綿を摘んだ。
「消毒するから」
しみるよ、そう言われた瞬間、ビリリと腕に激痛が走る。悲鳴をあげた俺にAは顔を顰めた。
「うるさい」
もう一度脱脂綿を押し付けたAに俺はまた絶叫した。
「…もう自分でして」
「あ、ちょ、ちょ!待ってくれよ!!」
慌てて掴んだ手をAは振りほどこうとする。その前に俺は叫んだ。
「キスしてくれ!!」
時間が止まったかと思った。長い間の後、Aが目をすがめる。
「なに?頭もやられた?」
「いや、キスには鎮痛効果があるって聞いたことあってよォ。その、麻酔代わりにならねぇかって…」
そう言いながら、いたたまれなくて目を背けた俺に、Aが不意に手を伸ばした。頬を張られるかと身構えた俺の目の前に、端整な顔立ちがある。
「噛まないでね」
Aがそう言って、俺に口付けた。と同時に、傷口にピンセットを突っ込む。痛みに開いた口に、Aの舌が入り込んだ。
(頭が…おかしくなる……)
激痛と快楽が同時に襲ってくる。麻酔代わりというよりは、最早…そう思いかけた時、口に痛みが走った。舌をかまれたらしい。
「いってぇ!!」
「取れた」
Aは軽く口を拭って、ピンセットを置いた。思わずすまんと呟いた俺の横で、Aは何事も無かったかのように包帯を巻いている。
「はい、これでおしまい」
名残惜しさと余韻にぼんやりとしていた俺の唇に、不意に柔らかいものが触れた。
「生きててよかった」
そう言って、ふいと背を向け出ていくAの後ろ姿に、俺はまた恋に落ちたのだった。
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りと(プロフ) - ∴さて、どこへ行こうか。さん» リクエストありがとうございます!返品が遅くなってしまい、大変申し訳ありません<(_ _)>リクエストの方、承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で取り扱わせて頂きたいと思います(^^♪ (2021年8月23日 23時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ?さん» ?さん、リクエストへの返信が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせていただきますヽ(*^^*)ノ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - モカさん» 返信がとても遅くなってしまい、申し訳ありません!リクエスト、承りました! (2021年7月19日 22時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
∴さて、どこへ行こうか。 - リクエストです。普段甘えない花京院典明の恋人(夢主)が甘える、という内容なのですがよろしいでしょうか?出来れば生存ifを希望します… (2020年11月6日 19時) (レス) id: a195df0bb5 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - リクエなのですが、露伴先生と病弱な夢主が恋人関係なのですがその病弱な夢主が意外にも悪徳的なスタンドを持っている事を知って何があったのかと聞くと泣きながら過去にあった親からの虐.待などを夢主が語っていき、その日は思う存分甘えされるみたいなのをください! (2020年3月27日 16時) (レス) id: d243ef7454 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2019年1月9日 21時