tough【東方仗助】 ページ28
意外と強いのかと思っていた。
『退院おめでとう』
そう言って、Aは俺に花束を渡して微笑んだ。その笑顔は、驚くほどにいつも通りだった。
(泣くか、と思ってたけど…)
スタンド使いとの戦闘で大怪我を負った俺は、救急車で運ばれたらしい。その間の意識はなかったが、康一や億泰によればAがずっと付き添っていた…と聞いている。その間、ずっとAは俺の名前を呼んで泣いていた、とも。
だから、退院した時泣き出すんじゃないか、と何となく思っていた。
「忙しい時期に、ごめんな」
「そんなこと気にしないで。仗助君の退院祝いの方が、私にとってはずっと重要な用事なんだから」
Aは学校の外でピアノをやっている。かなりの腕前で、もうじき賞のかかったコンサートがあるらしい。何もなければ、今だって練習していたいはずだろうに…と俺は、笑っているAを見つめた。
「退院祝い、何か欲しいものはある?」
「え!まだ何かくれんのか!?」
「そう高いものはあげられないけど…花束だけ、なんて味気ないでしょ」
そう言って微笑むAに、俺は「じゃあ!」とずいと顔をよせた。
「今度、デートしようぜ!」
「あら、そんなのでいいの?」
「そんなのって…俺にとっちゃあ、どんなものもらうよりも嬉しんだぜぇ?」
「大げさ」
呆れたようにAは笑った。
「でも、その時は写真はいっぱいとりたいわ」
そう言ったAの笑顔は、どこか寂し気に見えた気がした。
他愛もない話をしながら、Aとバス停から家まで歩いていると、ふといつもAと放課後しゃべっていた公園が目に留まった。いつもの光景なのだが、久しぶりだからか、とても懐かしい。
その時、いきなりAがしゃがみこんだ。
「…!?どうし─!」
触れた肩が震えている。聞こえる嗚咽と、地面を濡らす水滴に、すぐに泣いていると気がついた。
「だ、めだ…安心したら、な、みだがでちゃって…」
しゃくりあげながらそう言ったAを、思わず抱きしめていた。震えている体は、前より少し痩せている気がする。
「心配かけて、悪かった」
そう言って、俺は頭を下げた。相手の立場になって考えればわかることだった。もし、Aが大怪我をして入院したら、俺はとても正気でいられる自信がない。
泣いているAを抱きしめたまま、俺は誓った。
俺は、お前を置いて死ぬようなことはしない、と。
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りと(プロフ) - ∴さて、どこへ行こうか。さん» リクエストありがとうございます!返品が遅くなってしまい、大変申し訳ありません<(_ _)>リクエストの方、承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で取り扱わせて頂きたいと思います(^^♪ (2021年8月23日 23時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ?さん» ?さん、リクエストへの返信が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせていただきますヽ(*^^*)ノ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - モカさん» 返信がとても遅くなってしまい、申し訳ありません!リクエスト、承りました! (2021年7月19日 22時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
∴さて、どこへ行こうか。 - リクエストです。普段甘えない花京院典明の恋人(夢主)が甘える、という内容なのですがよろしいでしょうか?出来れば生存ifを希望します… (2020年11月6日 19時) (レス) id: a195df0bb5 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - リクエなのですが、露伴先生と病弱な夢主が恋人関係なのですがその病弱な夢主が意外にも悪徳的なスタンドを持っている事を知って何があったのかと聞くと泣きながら過去にあった親からの虐.待などを夢主が語っていき、その日は思う存分甘えされるみたいなのをください! (2020年3月27日 16時) (レス) id: d243ef7454 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2019年1月9日 21時