今際の際【ブローノ・ブチャラティ】 ページ22
きっとここで私の人生の幕が降りるのだろう。
「…」
撃ち抜かれた胸と腹を見つめ、私は壁にもたれかかり、長く息を吐いた。
敵の姿は遠くにぼんやりと見える。届かなかったか、そう思いながら痛みすら感じない自分の体にいよいよ死が迫っていることを直感した。
(寒いなあ…)
失血のせいで、体が随分と冷える。今頃、私の顔は土気色だろう。
(ま、こんな姿…あの人に見られなくてよかった)
こんなに不細工な顔見られたら、死んでも死にきれない。
それに、あの人は優しい。だから、きっと私の死を自分のせいだと思うだろう。
「ブ…ローノ……」
死ぬ間際、最後の最後だからと貴方の名を呼んでみた。
普段はブチャラティとしか呼べなかったことを今になって少し後悔している。男女の関係だったけれど、いつまでもブローノとは呼べなかった。ちゃんと恥ずかしがらずに名前を呼べばよかったなぁ、なんて些細な後悔が頭をいっぱいにした。
(ああ、なんでこんなこと考えちゃうんだろう)
いつも私をAと呼んでいた声や、ことある事に私を見つめていた青い目が走馬灯のように浮かんでは消える。最期になってあなたのことしか思い浮かばないくらい、私は貴方が好きだったのかと今になって気がついた。
(嫌ね、ここまで来て死にたくないなんて)
ほろりほろりと涙が落ちる。
と同時に、この顔を貴方に見られなくてよかったとも思った。最期の顔が泣き顔だと、記憶の中の私はきっと泣き顔のままだから。愛しい人には笑顔を覚えていて欲しい。
ヒュー、と喉から苦しげな息が漏れた。息が詰まり、視界は白くなっていく。
次第に次第に何も見えなくなっていく中で、私の額になにかが触れた。きっと拳銃だろう。
(ああ、これで終わりか)
たった一人で死んでいく。
そんな時なのに、私は不思議と幸せな気分でいた。もっと寂しいと思ったし、もっと未練が残ると思っていた。だが、今死ぬという時になってみると、案外心は穏やかだ。ブローノに死にゆく私を見られなくて済んだことや、記憶の中の私が笑顔であり続けられることを思うと、どこか嬉しいとすら思う。
それに、走馬灯のように浮かんでは消える貴方との思い出があんまりにも優しくて温かくて綺麗だから、死ぬのも不思議と怖くない。
(ああ、そうか……私は愛されていたんだ)
私はゆっくりと目を閉じた。
(幸せ、だったんだ)
パン、という軽い音で私の幸せな人生の幕はおりた。
295人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りと(プロフ) - ∴さて、どこへ行こうか。さん» リクエストありがとうございます!返品が遅くなってしまい、大変申し訳ありません<(_ _)>リクエストの方、承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で取り扱わせて頂きたいと思います(^^♪ (2021年8月23日 23時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ?さん» ?さん、リクエストへの返信が大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした<(_ _)>リクエスト承りました!ここではお話がいっぱいになってしまいましたので、続編の方で書かせていただきますヽ(*^^*)ノ (2021年8月12日 0時) (レス) id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - モカさん» 返信がとても遅くなってしまい、申し訳ありません!リクエスト、承りました! (2021年7月19日 22時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
∴さて、どこへ行こうか。 - リクエストです。普段甘えない花京院典明の恋人(夢主)が甘える、という内容なのですがよろしいでしょうか?出来れば生存ifを希望します… (2020年11月6日 19時) (レス) id: a195df0bb5 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - リクエなのですが、露伴先生と病弱な夢主が恋人関係なのですがその病弱な夢主が意外にも悪徳的なスタンドを持っている事を知って何があったのかと聞くと泣きながら過去にあった親からの虐.待などを夢主が語っていき、その日は思う存分甘えされるみたいなのをください! (2020年3月27日 16時) (レス) id: d243ef7454 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りと | 作成日時:2019年1月9日 21時