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わかってる。
だからそんな顔しないで?
「でも多分、その時はまたAのこと傷付けてしまうと思うねん」
「…うん」
「それでももう次は逃がさへんから」
「…大丈夫。もう逃げない」
「俺のことだけ信じて。そんでもう離れへんて覚悟しといてな」
「…出来てるよ」
そっと重なった手と手。
何十年先もこの手が離れないように私も頑張るから。
「私も。忠義くんと結婚したい」
こぼれた答えに忠義くんが満足そうに目を細めた。
「子供も欲しいやん?」
「…この年になって子供なんてほんと考えてなかった」
「まぁ、今から何人もは無理かもしらんけど。Aとの子供、普通に欲しい」
「だね。頑張れるかな」
「俺は全然頑張れるで?安心して?」
「変な意味じゃないからね?」
「んふふ、わかってるってぇ」
「もー、絶対わかってないでしょ」
見つめ合って、微笑み合って、どちらともなく近づく顔。
優しく触れて離れた唇。
「…早速頑張っとく?」
至近距離、熱の籠った瞳に体が疼いた。
結婚とか子供とかこれからの約束は一先ず置いておいて。
「うん…私も今日はめいっぱい忠義くんが欲しい」
「……やっば」
「ヤバい?ダメ?」
「ダメちゃうけど…あんまり煽ると知らんで?」
言い終わるのと同時、またすぐに口は塞がれた。
私の中を忠義くんが満たしていく。
その甘さに溺れてしまう前に。
「ねぇ、忠義くん」
口にした愛しい名前。
動きを止めた唇。
目の前の不満そうな顔。
「……何。この流れよう止めれるな」
「ごめんね。でも今言いたい」
「だから、何?」
あの時答える事の出来なかった言葉を、今、忠義くんに返すから。
ちゃんと聞いて欲しい。
「…忠義くん、愛してるよ」
目を開いて、まじまじと私を見返して。
「…ほんま……覚悟せぇよ」
小さく呟いた忠義くんが私の唇に噛み付いた。
もちろん、覚悟は出来てるよ?
だから今はただただあなたに溺れさせて。
おわり
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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時