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どういうわけか随分頑固な忠義くんにお願いされて、両親へ明日の予定を確認中。
おばあちゃんの住んでた名残を存分に残したうちにはソファなんてなくて、リビングというより居間と言った方がピッタリのそこに置かれたローテーブルを前に、後ろから抱きつかれた状態で。
スマホを当てていない方の肩に忠義くんが頭を乗っけてくるから電話しにくいんだけど。
しっかりと腰に腕が回されて、離れようにも離れられない。
仕方なく紹介したい人がいる事を簡潔に伝えると、驚いたお母さんの声の大きさにこっちが驚いた。
それは私の耳を通過して、漏れ聞こえたらしく忠義くんも驚いてビクッと反応した。
「お母さん声でっかい」
「ごめんごめん」
それで?誰?もしかして彼氏?と電話の向こうで少しずつ声色が明るくなる。
普段何か言われる事はないけど、やっぱりそれなりに心配なんだろう。
「…うん。まぁ、」
「あら本当?そんな人いつの間に出来てたの?紹介したいって、結婚するの?」
「いや、結婚とかじゃないけど。忙しい人だから明日しか都合付かなくて」
「そうなの?明日ね…大丈夫。忙しいってどんな方?」
「どんな方って…お母さんも知ってる人」
なかなか名前を言い出せないでいると、はよ言うてなんて吐息混じの低い声が私の耳をくすぐった。
人が電話中だと思って、絶対わざとだ。
お腹に回された忠義くんの手をペシペシと叩いて抗議する。
忠義くんはそんなの全く気にしない様子。
むしろ私の反応を面白がっているのか、人の肩に顔を埋めて笑いを堪えている。
そこで笑うのもやめて欲しい。
…もう早く電話を切ろう。
「…大倉さん」
「…大倉さん?……え?大倉さんて…あの大倉さん?」
「うん。あの大倉さん。だからビックリしないでねってことで。じゃ、また明日行く時連絡する」
驚くお母さんはほぼほぼ無視して。一気にそう言って、勝手に通話を終わらせた。
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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時