3.(side T.O) ページ46
上目遣いでおねだりされたら、応えないわけにいかんから。
チュッと軽く触れるだけのキスをしてから、立ち上がった。
今までのツンツンが嘘みたいに甘えん坊モードのAは可愛い。
さっきから顔も緩みっぱなし。
初めてのキッチンは慣れへんけど。
適当に漁りながらご機嫌に完成させたのは、付き合うてる頃からAが好きなヤツ。
それを食べて嬉しそうなAはますます可愛い。
相変わらず美味そうに食べる姿に癒される。
その後は2人で片付けして、久しぶりに引っ付いて。
2年半振りのその時間に、帰るの嫌やなぁって、そら思うわけやけど。
そうも言うてられへん。
今回は帰る前にどうしてもしておきたい事がある。
引っ付いてたAから離れて向かい合う。
「明日帰るつもりやねんけど、帰る前にAのご両親の所に挨拶に行きたいねん」
「………は?」
本日2度目。
Aの目ん玉がまた飛び出しそうになってもうた。
笑ってまうやん。
真面目な話したいのにやめて。
「急で悪いんやけど、都合つくか聞いてくれへん?」
必死に堪えながら続ける俺と面白いぐらい慌てとるA。
「そ、そんなの、しなくて良いよ」
「アカンアカン。こっちに戻って来た理由も理由やし、また心配させてまうやろ」
「私から言うって」
「俺からちゃんと言いたいねん」
「ちゃんとって…いきなり忠義くんが行ったらビックリしちゃうから」
「そこは言うといてよ」
「だからそれなら全部言っておくってば」
「なんでそんなに拒否すんねん。行く言うてるやろ。ちゃんとしときたい言うてるやん」
「ちゃんとって…ちゃんとって何?もう若くないし、反対なんてされないって」
案の定、Aはなかなか首を縦に振らん。
俺のちゃんとが気になるようで、最後はもうあからさまに不満そうな顔をした。
せやけど俺もなかなか来れるわけやないから、譲る気はない。
「何って、俺もうAのこと帰す気ないねん」
「私だって戻るからにはそのつもりだよ」
「ほな尚更やろ?Aの親にも安心して送り出して欲しいから、挨拶したい」
あの時傷付いたAを手離したのは結局俺で。
散々その姿も目にしたであろうAの両親が、俺とまた一緒に暮らすなんて、簡単に納得してくれると思えへん。
俺の真剣な声にまた少し驚いて、Aは諦めたように溜息をついた。
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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時