検索窓
今日:24 hit、昨日:31 hit、合計:40,808 hit

187. ページ40

田舎の終電は早い。そろそろ帰らないと終電を逃しちゃいそうな時間だ。



「…そろそろ終電なんで帰りましょうか?明日仕事ですよね?」

「うん、まぁ…じゃあ、これ飲んだら帰ろうか」



そういう彼もお酒が強いと思う。

目の前のグラスを手に、来た時と変わらない笑顔を浮かべてる。



「…今日楽しかったです」

「あ、良かった。俺も」



最後の一杯を飲みながら、その言葉は素直にこぼれた。

さっきまでは帰りたかったはずなのに、自分で思ってるよりはるかに酔ってるのかもしれない。

微笑んだままの彼と目が合った。



「…実はさ、」



お互いのグラスの中はもうほとんど残っていなくて、もうすぐこの時間は終わりを告げる。

彼は一瞬考えて、グイッとそれを飲み干した。



「実は俺、バツイチなんだよね」

「…えっ?」



そして突然の告白。

多少の驚きはあったけど、別に年齢を考えれば結婚していたとしても不思議はない。

さらに言えば、バツイチだからたってたいした事でもない。



「離婚する時、結構大変でさ。もういろいろ懲り懲りだと思ってたんだけど」



だからと言って、今日会ったばかりの私にそんな話をする必要はないわけで。

返事に困る私に、彼は構わず続けた。



「でもまだ40だし。まだ人生半分なのに、このままずっと1人なのも寂しいかなぁって最近思うんだよね」

「…それは、なんとなくわかります」

「たまには誰かに甘えたい夜もあったりして」

「…ですね」

「…今日、本当に楽しかった」



彼が柔らかな笑顔を引き締めて、私の瞳を捉えた。


わざわざ今日会ったばかりの私に、隠さず話す事には彼なりの理由があるんだろうし、それがわからないほど鈍感でもない。


少し白髪混じりの髪の毛、彼のこれまでを刻むような笑い皺。穏やかな口調と、柔らかな眼差し。真っ直ぐに紡がれる言葉たち。

彼は、とても魅力的な大人の男性だ。

きっともっとたくさんの魅力があるんだと思う。

これから少しずつ距離を縮めて、少しずつお互いの事を知っていきながら、少しずつ分かり合っていく。

その先に、彼と過ごす穏やかな未来もあるのかもしれない。


だけど、私が欲しいのはそんな未来じゃなくて。



「…また誘っても良いかな?」



心配してくれてるゆきちゃんにも、こんな風に言ってくれる彼にも、申し訳ないけど。

答えは最初から決まってる。


もうずっと私の心を掴んで離さないのは、忠義くんだけだ。

188.→←186.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (96 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
332人がお気に入り
設定タグ:関ジャニ∞ , 大倉忠義
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。