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185.(side T.O) ページ38

でも抑えられたのはほんの一瞬。

しれっと言ってのける幼馴染に、苛立ちが募る。



「それに今日、先輩紹介したとこだし」

「……は?勝手な事すんなや」

「Aも満更じゃないみたいだし」

「そんなわけあるか!」

「あ、A戻ってきた。俺ももう帰るし、これから2人の時間なんで、もう電話してくんなよ。じゃあな」

「は?ちょ、待てって!Aに変われやっ」



しかも幼馴染は俺の言葉を最後まで聞きもせず、これまた勝手に通話を終わらせた。


なんで?どういう事?

満更じゃないって、これから2人きりって、ウソやろ?


確かに写真撮られた俺も悪い。

けど話も聞きもせんと、なんで勝手に他の男と会うてんの?


言われ放題で消化しきれへんまま。

別に信じてるわけやないけど、それでも幼馴染の言葉は俺の自信をますます削ぎ落としてくれた。


見つめたスマホの画面をタップして、もう一度Aに電話を掛けてみる。

せやけどそれはもう繋がらんかった。



「…誰だったんですか?」



その声に視線を上げる。

バックミラーに映る小林くんが心配そうに聞いてくる。



「Aの幼馴染」

「幼馴染さんが勝手に電話出たんですか?」

「そうやねん。おかしいやろ?ほんま腹立つわぁ」



思い出してまたイライラし始める俺に、小林くんは何故だか微笑んで。



「…今から行っちゃいます?」



いつかのヤスのように突拍子もない事を口にした。

仕事終わり、ゆっくり休んでください言うならまだしも今から女に会いに行けって。

さっきまで小言言うてたマネージャーの台詞とは思えへん。



「明日からどうせ行くつもりだったんだから、今からでも良いじゃないですか」



けど、そうやな。小林くんの言う通り。

明日なんて待ってる場合ちゃう。自信無くしてる場合ちゃうねん。



「そやな。行ってまうか」

「送りましょうか?」

「いや、さすがに1人で行くけど。家までは急いでくれへん?」

「はい!」



予想通り、あの幼馴染がここぞとばかりに言うてた先輩とやらを紹介したんやろ。


せやけど、ようやく動き出した時間を止めるわけにはいかん。

俺の2年半を、ただひたすらにAを待ってたこの気持ちを、甘く見んといて欲しい。

Aも…俺以外の男に一瞬でもなびいたら、許さんから。

186.→←184.(side T.O)



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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時

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