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183.(side T.O) ページ36

ずっとAとの事は知っとるし、電話しとるのもちょこちょこ聞いとるし。

事務所にはまたちゃんと報告するとして、小林くんには軽く話はしてあったから、明日Aのところに行く事も知っている。

なんで小林くんが嬉しそうなのかは疑問やけど。



「実は僕、散々送ったのにAさんのお店結局行けてないんですよね」

「あー、そうやんなぁ」

「噂の鯛茶漬け食べてみたいです」

「…別に普通やで?」



あれはAが俺の為だけに作るから美味しいねん。

小林くんには絶対食べさせてやらんわ。

それに正直こないだまでは自信しかなかったけど、今はどうなるかわからへん。

また振り出しに戻ってもうてたらどないしよ、なんて少しの不安が頭をよぎる。



「…まさかまだ連絡つかないんですか?」



あからさまにテンションの低い俺に、小林くんが眉間に皺を寄せた。

そらそうや。

いつもやったら、明日Aんとこ行くなんて日は自分でも呆れるくらい饒舌やもん。

小林くんが気付かんはずがない。



「まぁ、何をまた撮られてるんだって話ですけど。しかもツアー中に。ちょっと考えなしですよね?さすがに何してるんだって思いましたよ?」



マネージャーとしての小言を交えながら言われてしまうと返す言葉が見つからない。

でも俺やって好きで撮られたわけちゃうし、ちゃんと反省もしてる。

半分お説教のようなそれを右から左に聞き流してると、信号待ちで車を止めた小林くんがえらい形相で振り返った。



「ちゃんと聞いてますか?」

「…聞いてるっちゅーねん」

「Aさんとよりが戻ったら僕もちゃんとフォローしますから。だからそんな沈んでないで、頑張ってくださいね」

「……は?なんの話しとったん?」

「ほら、聞いてないじゃないですか」



小言はいつの間にか励ましの内容に変わってたらしい。

小林くんがじとっと不満そうな顔。

急にそんな事言われたら、少し照れてもうて。



「……前。信号、青やで」



チラッと視線を上げて、青に変わった信号を指差した。

誤魔化さないでください、と不満そうなまま、小林くんは再びハンドルを握った。

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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時

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