182.(side T.O) ページ35
…あかん。
あの記事が出てもうてから、Aが電話に出ぇへん。
LINEも見事に既読無視。
言い訳もさせてくれへん。もう絶対怒ってるやつやん。
「…そら怒るやろ。おまえはほんまに…アホなんか?」
ツアーもラスト。
ほんまやったら気分も最高潮のはずやのに、1人項垂れる俺に信ちゃんが呆れた顔をした。
わかってるよ。
ヤスと一緒に帰っておけば良かったって思ってる。
せめて隣に誘わんかったら…なんて今更やけど。
あの時抱いたよこしまな気持ちも反省しとる。
「…でも無視はアカンやん」
「それくらい怒ってるっちゅーことや」
「…言わんといて」
「…まぁ、もともとそない怒るようなタイプちゃうやろ?」
「…そない怒った事がないから怖いんやろ」
「知らんがな!」
俺の不安なんて気にもしてくれへん様子で、信ちゃんは最後には他人事のように笑いながら。
シャツどこや、あっこか!飯食うてくるわ。と今日もいちいちでっかい独り言を言いながら楽屋を出て行った。
チラッと横山くんを見ると、また言うてるわって呆れた顔しとる。
……なんて、そんな事どうでもええねん!
もうラストやで?
約束したやん。行くって言うたやん。
頼むから返事くらいして欲しい。
何より、あんな記事出てもうたら…あの幼馴染が絶対黙ってない。
兄妹面した幼馴染のゆきちゃん。
ここぞとばかりに絶対余計な事する気がして仕方ない。
もうたいして覚えてへん幼馴染の顔がチラついて、信ちゃんの独り言に負けへんでっかい溜息が漏れた。
「大倉さん、家で良いですか?」
「うん」
無事にライブも終わって、予定通りいよいよ明日からオフ。
小林くんの運転する車に揺られながら、座席に身を沈める。
相変わらずAからの返事はないままやけど、明日行くってちゃんとわかってるやろか。
「いよいよ明日ですね」
チラッとバックミラー越しに俺を見て、嬉しそうな顔の小林くん。
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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時